日本のグループ、太陽に連続衝撃波を発見
【2008年9月10日 京都大学】
飛騨天文台の太陽磁場活動望遠鏡(SMART)を用いた観測で、日本の研究グループが世界で初めて、太陽フレアに伴って連続発生した3つの衝撃波を発見した。
京都大学付属飛騨天文台のSMARTは、太陽面爆発や黒点の変化などの観測において、世界最高水準の能力を誇っている。そのSMARTが、太陽で起こった単独のフレアに伴って発生した3連続の衝撃波を世界で初めて発見した。
太陽フレアは、太陽系で最大の爆発現象といえる。太陽でフレアが発生すると、衝撃波が発生し、コロナ中を伝わる。衝撃波が伝わっていく様子を観測した例はひじょうに少ない。
SMARTは、太陽表面のわずか上空の彩層と呼ばれる層から出るHα線(水素原子の発する波長656.3nmの光)を観測している。太陽フレアによって発生した衝撃波はコロナ中を伝わるが、その際、彩層を押さえつけながら伝わることがある。押さえつけられた場所は衝撃波の速さで移動し、Hα線で伝わる波「モートン波」(1960年代に発見され、発見者の名前にちなんでこう呼ばれる)として観測される。
京都大学の柴田一成教授らの研究グループはSMARTを使った観測で、およそ10分間に3連続で発生したモートン波を発見した。このことから、衝撃波は今まで考えられていた以上の頻度で発生している可能性が示された。
また、研究チームは、2つの衝撃波が合体する様子も初めて観測した。最初に発生した衝撃波の速度は遅く、2番目に発生した速度の速い衝撃波に追いつかれ、2つの衝撃波が合体したのである。合体により衝撃波が強くなったことも電波のデータから明らかとなった。
さらに、3つのモートン波の発生には、瞬間的なエネルギーの解放と、フィラメントの噴出が強く関係していることも明らかとなった。フィラメントとは、太陽の磁場に蓄えられたエネルギーが解放される際に噴き出すことのある、冷たいプラズマガスの塊である。
今回観測された3連続のモートン波それぞれの発生時刻に、瞬間的なエネルギーの解放が観測された。各々のモートン波に対応したフィラメントが3度噴出しており、噴き出す方向や速度は、対応するモートン波が伝搬した方向や速さと関係していることもわかった。
これまで、モートン波の発生メカニズムについては、はっきりとわかっていなかったが、今回の発見により、フィラメントの噴出がモートン波を発生させているという説が立てられることとなった。