地上でもっとも鮮明な木星画像

【2008年10月6日 ESO

地上からとらえた木星の画像としては、これまででもっとも鮮明なものが公開された。この画像から、木星の大気が数年のうちに大きな変化を見せていることがわかった。


(木星の擬似カラー画像)

木星の擬似色画像。約20分の観測で得られた赤外線画像を重ね合わせている。クリックで拡大(提供:ESO/F. Marchis, M. Wong, E. Marchetti, P. Amico, S. Tordo)

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡VLTに、新型の補償光学装置「MAD」を取り付けて木星の撮影が行われた。

昨年3月にファーストライトを迎えたMADは、新型の技術を使った補償光学の実験機。補償光学とは、観測する天体の近くにあるガイド星の光を観測して大気のゆらぎを測定し、天体の像からゆらぎの影響を取り除く技術である。これにより、常に鮮明な星像が得られる。

大気のゆらぎ方は見る方向によってまちまちなので、単独のガイド星をゆらぎの基準とするなら、そこから離れすぎた天体の補正としては使えない。そのため、補償光学装置の視野はふつう15秒角以下に限定される。一方、MADは複数のガイド星を追うことで、1〜2分角という広い領域にわたる補正を実現する。

8月16日から17日にまたがって行われた撮影でMADがガイド星として使ったのは、木星の2つの衛星、エウロパとイオ。木星を挟んだ反対側にあり、しかも異なる速度で移動している2つの天体を追い続けることで、2時間にもわたって木星を写し続け、256枚の赤外線画像を撮影した。この観測で得られた画像では、約300kmほど大きさの特徴を見分けることができる。

これらの画像を、ハッブル宇宙望遠鏡が2005年に撮影した画像と比較したところ、木星の赤道付近で大きな変化が起きていることがわかった。2005年には北半球側に明るい領域があったが、今回の画像では6000km南の南半球側に移動していたのである。

明るく見えるのは、大気の上層にあって太陽光を強く反射する窒素化合物などのもやである。明るさが強くなったということは、もや自体の量が増えたか、より高い高度にもやが移動したことを示している。昨年、木星全体で見られた縞模様の大きな変化との関連も指摘されている。