ハッブル最後の修理へ アトランティス号打ち上げ成功
【2009年5月12日 NASA】
NASAのスペースシャトル「アトランティス号」(STS-125)は、米国東部時間(以下同様)5月11日午後2時01分(日本時間12日午前3時01分)に7人の宇宙飛行士を乗せて打ち上げられた。ハッブル宇宙望遠鏡の5回目にして最後の修復ミッションを行い、さらなる性能向上をはかる。
「アトランティス号」は米・フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられ、予定どおり地球周回軌道に投入された。11日間のミッション中に5回の船外活動が行われ、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の修理と装置追加が実施される。
HSTが1990年4月に軌道投入されてから、1993年12月、1997年2月、1999年12月、2002年3月の計4回、スペースシャトルによる有人修理ミッションが実施されてきた。定期的な修理と部品交換、そして新しい観測装置の搭載によって、HSTは最先端の観測性能を19年間維持してきた。
しかし、2003年に起きたスペースシャトル「コロンビア号」の空中分解事故によって、修理計画は長い間凍結。ようやく2008年10月に実施が決まったが、打ち上げ直前にHSTがデータ送信不能に陥り再延期となってしまった。
この間、「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」や「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」が故障するなどHSTの老朽化は進み、「限界説」がささやかれることも少なくない。しかし、NASAは今回の修復ミッションでHSTは2014年まで現役を続けるだろうとしている。
修復ミッションでは、歴史的な画像を撮り続けた「広視野/惑星カメラ2(WFPC2)」に代わる「広視野/惑星カメラ3(WFPC3)」と、初期宇宙で天体や大規模構造が形成された過程などを探る「宇宙起源分光器(COS」が取り付けられる。
技術的に難易度が高いが、ACSとSTISの修復も予定されている。ACSは可視光で圧倒的な撮像性能を誇り(WFPC3は紫外線や赤外線にも対応した汎用的な装置)、STISはさまざまな波長の光を分析できる(COSは紫外線に特化)。すべてがそろえば近赤外線から紫外線までをカバーするオールマイティーな宇宙望遠鏡が完成するとあって、研究者の期待は大きい。
HSTに代わる次世代の宇宙望遠鏡が数多く計画される中、今回が最後の修復ミッションとなる。しかし、ミッションの内容やごく最近のHSTによる成果を考えれば、これは決して「引退間際の宇宙望遠鏡に対する延命処置」ではないはずだ。