土星を取り巻く巨大な環を発見
【2009年10月8日 Spitzer News】
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが、土星のまわりに、これまでで最大の環を発見した。そのサイズは直径約3600万km、幅約600万km、厚さ約120万kmもあり、直径に合わせて土星を並べると300個ほどが収まる。これまでに発見された環と比べると桁違いのスケールだ。
赤外線天文衛星スピッツァーによる観測で、土星のまわりに直径が約3600万km(土星の300倍)、厚みが120万km(土星20個分)もある巨大な環が発見された。
環の内側は土星から約600万kmの位置にあり、そこから1200万kmほどの距離にまで広がっている。土星のすぐ近くにあるほかの環とくらべ、およそ27度かたむいていて、衛星フェーベの公転軌道を包む。どうやらフェーベが環に物質を供給しているらしい。環とフェーベは、従来から知られる環や大多数の衛星とは逆方向に、土星のまわりを回っている。
米・バージニア大学の研究者であるAnne Verbiscer氏は「もしも、直接見ることができれば、満月の2倍ほどに広がった環が土星のわきに見えるはずです」と話している。これほど大きなものがなぜ今まで発見されなかったのだろう。
土星にはあまり太陽光が届かない。また、環を構成する氷とちりの粒子はとても希薄で、人間が環の中に立っても認識できないほどだという。物質の密度が低すぎて、太陽光がほとんど反射されないため、可視光による観測は不可能だ。
それに対して、スピッツァーの持つ赤外線の目なら、環を構成する低温の粒子が発する放射をとらえることができる。
この発見で、土星の衛星イアペタスの「二面性」、つまり片面が白くて片面が黒い理由が説明できるかもしれない。環から内側に入りこんできた粒子は、イアペタスと反対側に回っているので、常にイアペタスの進行方向に降り積もる。イアペタスは常に土星に対して同じ面を向けているので、片側だけが黒くなるというわけだ。
米・メリーランド大学のDouglas Hamilton氏は「天文学者は、土星系の外縁を回るフェーべと、イアペタスの暗い物質との間には、何か関係があるとにらんでいました。この新しい環の発見は、両者を結びつける決定的な証拠をもたらしました」と語った。