「すざく」、木星のまわりになぞのX線放射を発見

【2010年1月27日 首都大学東京】

X線天文衛星「すざく」のデータから、木星の周辺にエネルギーの高いX線放射が発見された。これまで木星のまわりでは、比較的低いエネルギーのX線放射は知られていたが、高エネルギーX線が観測されたのは初めてのことである。


(「すざく」が観測した木星周辺の硬X線の画像)

「すざく」が観測した木星周辺の硬X線の画像(木星の可視光画像と磁力線モデルを重ねて表示)。クリックで拡大(提供:首都大学東京)

(木星の放射線帯の想像図)

木星の放射線帯の想像図。クリックで拡大(提供:首都大学東京)

首都大学東京の研究グループが、X線天文衛星「すざく」のデータから、高エネルギーのX線(硬X線)放射を発見した。硬X線は、木星の周囲約100万km×50万kmの範囲(衛星イオの軌道の2倍以上)に広がっている。

これまでに他のX線天文衛星の観測から、木星本体や衛星イオの軌道から比較的低いエネルギーのX線(軟X線)が放射されていることは知られていたが、高エネルギーのX線が発見されたのは初めてのことである。

硬X線の広がりは、木星の強力な磁場にとらえられた粒子が作る帯状の構造(放射線帯)とよく一致しているという。木星の磁場は、地球の磁場の1万倍である。

また、硬X線の放射メカニズムは、何らかのしくみで光速近くにまで加速された大量の高エネルギー電子から、太陽の光子がエネルギーを得ているためではないかと考えられており、このような現象が惑星から検出されたのも初めてである。

なお、木星の放射線帯を探査機が直接観測するのは難しいため、今後「すざく」をはじめとするX線観測衛星が木星の放射線帯における粒子加速のメカニズムを探る新たな手段になると期待されている。