史上最長のガンマ線バースト
【2011年6月22日 NASA】
NASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」が、通常数時間で減光するガンマ線バーストが2ヶ月以上も続いている天体を発見した。現在もスウィフトや「ハッブル宇宙望遠鏡」、X線観測衛星「チャンドラ」を使って観測が続けられている。
ガンマ線バーストとは、ある日突然ガンマ線やX線で天体が非常に明るく輝く現象だ。数時間から数日で減光してしまい、また可視光線ではそれほど大きな変化が見えない。何故このように突発的に明るくなるのか、そのメカニズムはよくわかってない。
2011年3月28日、「スウィフト」に搭載されている「バースト警報望遠鏡」が、りゅう座の方向にX線のバーストを発見し、GRB110328Aと名づけられた(その後、このバースト天体の名前はSw 1644+57となった)。すぐにいくつかの望遠鏡で観測が行われ、バーストが起こったと思われる方向に小さな銀河が発見された。4月4日には「ハッブル宇宙望遠鏡」によってバーストがこの小さな銀河の中心部で発生したことが突き止められ、その銀河までの距離はおよそ38億光年とわかった。
同日に「チャンドラ」でも観測を行った結果、スウィフトの約10倍の精度でバースト天体の位置が特定され、ハッブル宇宙望遠鏡の捉えた銀河のちょうど中心に位置していることがわかった。
太陽系のある天の川銀河を含め、ほとんどの銀河にはその中心部に大質量ブラックホールが存在していることが知られている。このバーストは銀河の中心で発生したと考えられるため、銀河中心のブラックホールによって星が引き裂かれたことがバーストの原因ではないかと当初考えられていた。
しかし、X線でこれほど明るいということ、明るさが変化していることの説明が、今のところできていない。このバーストは4月3日以降に5回以上の増光が確認されているなど複数回の増光を繰り返している。X線自体は星を形成していたガスが光速に近い速度でブラックホールに落ち込むことで発生しているのではないかと考えられている。
イギリス・ウォーウィック大学のAndrew Levan氏によると、この天体を説明するにはジェットを真正面から見ていると考えるのが良いようだ。もし本当に真正面からジェットを見ることができているなら、他のガンマ線バースト天体のように横から見ているときには見落としている点について、何かわかるかもしれない。
今後の方針として、この銀河の中心部の明るさに変化があるかどうか、ハッブル宇宙望遠鏡を使った追観測が計画されている。