天の川銀河内の変光星600個の3次元位置を正確に決定

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【2011年9月20日 鹿児島大学】

鹿児島大学の研究チームは、三角測量と変光周期から導いた「変光周期と距離の関係式」を用いて、天の川銀河にある約600個のミラ型変光星の立体配置を求めた。


くじら座のミラを代表とする「ミラ型変光星」は、太陽程度の質量の恒星がその末期に膨張・収縮を繰り返すために明るさが100〜1000日単位で周期的に変わる天体だ。その周期が長いほど真の明るさが明るいという一定の関係(周期光度関係)があるため、変光周期を観測すればその星の真の明るさを推定できる。こうして得た真の明るさの推定値と見かけの明るさの実測値を比べれば、その星までの距離を求めることができる。

この方法を使って、天の川銀河の中にあるたくさんのミラ型変光星までの距離を決めることができれば、ミラ型変光星を「ランドマーク」として天の川銀河の「3次元地図」を作ることができる。とはいえ実際には、天の川銀河内にあるミラ型変光星について、精度のよい周期光度関係は今まで得られていなかった。

周期光度関係を決めるためには、いくつかのミラ型変光星のサンプルについて「変光周期」と「真の明るさ」を知る必要がある。このうち天体の「真の明るさ」を直接測る手段は存在しないため、「見かけの明るさ」を観測してから、何か別の方法でその天体までの「距離」を精度よく求めて「真の明るさ」に焼き直すしかない。しかし、あいにく太陽の近くにはミラ型変光星がないため、いくつものミラ型変光星について高い精度で距離を得るのは難しかったのだ。

今回の研究では、天の川銀河内のミラ型変光星までの距離を、VERA望遠鏡を使ってこれまでにない高い精度で求めることに成功した。VERA望遠鏡は岩手県奥州市、東京都小笠原父島、沖縄県石垣島、鹿児島県薩摩川内市の4箇所に設置された20m電波望遠鏡を組み合わせ、実質的に口径2300kmもの巨大な望遠鏡に匹敵する高い解像度を得られる電波望遠鏡システムである。このシステムを使い、地球が公転軌道上を動くことで星がわずかに動いて見える現象(年周視差)を観測することで、三角測量の要領でいくつかのミラ型変光星までの距離を測定した。これにより、天の川銀河内のミラ型変光星の周期光度関係を求めることができた。

さらに研究チームでは、鹿児島大学の1m光赤外線望遠鏡を使って数多くのミラ型変光星の変光周期を観測し、VERA望遠鏡の観測から導かれた近赤外線での周期光度関係式を使って、約600個のミラ型変光星までの距離を初めて決定した。

このプロジェクトは今後も続けられる。さらに観測データが増えて数多くの天体までの距離が高い精度で求まり、天の川銀河全体の構造が明らかになることが期待される。