アルマ望遠鏡、生まれたばかりの星から新しい水分子メーザーを初検出
【2012年10月23日 アルマ望遠鏡】
アルマ望遠鏡が、生まれたばかりの星から高エネルギー状態の水分子メーザーを初めて検出した。星の誕生や生まれたての星の様子を研究する上で重要な成果だ。
国立天文台の廣田朋也助教が率いる研究チームは、南米チリのアルマ望遠鏡を用いてオリオン座大星雲にある生まれたばかりの星オリオンKL電波源I(アイ)を観測し、高エネルギー状態にある水分子が放つメーザーの検出に成功した。高エネルギー状態の水メーザーは、年老いた星ではこれまでに数例の検出例があったが、生まれたばかりの星では初めての検出だ。アルマ望遠鏡のかつてない高感度と撮像能力によって初めて可能になった研究成果と言える。
研究チームはこれまで、国立天文台の電波望遠鏡ネットワークVERAを用いて、オリオンKL電波源Iの観測を行ってきた。電波源Iの周囲にあるガスの円盤や高速ジェットからは、低エネルギー状態にある水分子や一酸化ケイ素分子のメーザーが発せられてる。VERAで得られたこのデータと今回アルマ望遠鏡で検出された高エネルギー状態の水メーザーを比較すると、それらが同じ速度で運動するガスから放出されていることが明らかになった。
この結果は、高エネルギー状態の水メーザーも、生まれたばかりの星のごく近傍にあるガス円盤あるいは高速ジェットの高温ガスから放射されていることを意味している。高温ガスの新たな観測手段を手に入れたことになり、生まれたばかりの星のより近くにまで迫る研究が可能になった。
今後アルマ望遠鏡はさらなる高性能化が進められており、近い将来に現在の50倍の高解像度で天体画像が得られるようになる計画だという。高エネルギー状態にある水メーザーの観測を通してオリオンKLの性質やその周辺を回るガス円盤、噴き出す高速ジェットの詳細な撮像がアルマ望遠鏡を用いて可能になれば、星がどのようにして生まれるかという謎の解明が進むと期待される。