見つけた! 撮った! パンスターズ彗星

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【2013年3月12日 アストロアーツ】

3月10日に近日点を通過し、北半球の空へとやってきたパンスターズ彗星。当初予想より暗めとはいえ、何年ぶりかの肉眼彗星へと天文ファンの期待は高まる。日本各地から撮影・目撃報告が届く中、東京都渋谷区にあるアストロアーツ事務所の屋上でもその姿を確認することができた。


3月11日のパンスターズ彗星

3月11日に撮影したパンスターズ彗星。2013年3月11日18時26分(日没40分後)1秒露出、ISO 1600/Nikon D5100+80-400mmズーム(200mm F5.3)/固定撮影。拡大像は16枚コンポジット、トリミング。クリックで拡大(撮影:門田健一、東京都渋谷区にて)

「ステラナビゲータ」でシミュレーション

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」の画面に実写の景色画像を合成し、夕景の中で彗星を探す目安とした。視野円は16×70mm双眼鏡の実視界4度。クリックで画面拡大表示

アストロアーツのあるビル屋上での観測

アストロアーツの事務所があるビルの屋上では、3月6日以降「パンスターズ捜索」が夕方の日課になっていた(屋上スナップは3月6日)。クリックで拡大

マイナス等級の大彗星になると予想されたパンスターズ彗星(C/2011 L4)。年が明けてから増光の足は鈍り、最大光度の見積もりは当初の予想からはだいぶ暗い2等級へと修正されてしまった。それでも南半球からは肉眼彗星となった様子が届き、近日点通過直前には1〜0等になったとの観測報告もあって期待は高まる。

3月6日以降、アストロアーツ事務所のある4階建てビルの屋上に、日没を見計らって双眼鏡やカメラを手にしたスタッフが集まり彗星を探すも、低空のモヤと彗星自体の低さ・暗さのため眼視でも写真でもその姿をとらえられない日が続いた。代わりに撮影した飛行機雲を見せて「ほら、彗星だ」と冗談を言い合うのがせいぜいであった。

そして迎えた3月11日、3月9日や10日に日本各地で撮影された画像がウェブの投稿画像ギャラリーに続々と届く中、「今日は天気も良いから見られそうだ」という明るい予想が社内をめぐり、午後6時、皆いそいそと屋上へと上った。

日没から15分ほど過ぎた空はまだしっかりと明るいが、透明度は比較的良く低空の雲もほとんど見られない好条件だ。しかし地平線シルエットを貼り付けたステラナビゲータのシミュレーション画面で見当をつけて、数km先のマンションのシルエットを目じるしに彗星を探すも、なかなか彗星らしきものは視野に入ってこない。周りでも「どう?」「う〜ん」「そろそろ見えるはず」という会話が繰り返されている。

「眼視では無理か…?」という弱気な声を振り払い、再びシミュレーション画面を参考に何度目かの挑戦。視野の中にふっと白いものが浮かび上がった。息をとめてもう一度しっかり見つめると、うっすらとたなびく尾が。「……見つけた!」

彗星を見つけたのは18時10分過ぎのことだった。この日の日没は17時46分だから発見したのは日没25分後、彗星の地平高度は7.5度だった。16×70、20×80双眼鏡では頭部から左上に伸びる尾も確認できたが、口径が4〜5cmの双眼鏡では存在自体を見つけることができなかった。眼視で彗星を確認した後、200〜400mmクラスの望遠レンズを装着したデジタルカメラでも明瞭に写るようになったが、彗星の高度が下がるにつれてその像はとらえにくくなり、彗星の地平高度が4度を切った18時30分ごろには眼視で確認できなくなった。

彗星は、これからどんどん北の方に移っていくが、地平高度はそれほど高くはならない。しかも、じょじょに太陽から遠ざかっていくので暗くなっていく。パンスターズ彗星を見つけるには、これらの条件を見極め、透明度の良い日(=空が濃い青色をしている日)を逃さないことが肝要だ。もちろん西〜北西の空が開けた観測場所をあらかじめ探しておかなければならない。