火星探査ミッションで放射線計測 有人計画に活用
【2013年5月31日 NASA】
有人宇宙活動に大きく影響する宇宙放射線の計測が、無人火星ミッションで実施されている。こうした成果は、今後の宇宙船開発などで活用される。
2012年8月に火星に着陸したNASAの探査車「キュリオシティ」は、人類が火星に向かうための“下調べ”も行っている。
有人宇宙ミッションで大きな問題となるのが、飛行中、あるいは天体上で浴びる宇宙放射線だ。太陽系外からやってくる「銀河宇宙線」と、「太陽宇宙線」の2つがあり、多く浴びるとがんの発生リスクを高めるなど人体に有害な影響を与える。
大気で守られた地上での平均被曝線量は1年間で約2.4mSv(ミリシーベルト)なのに対して、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の宇宙飛行士達の場合はたった1日で0.5〜1mSvにもおよぶ。NASAでは、ISSのような地球周回低軌道における宇宙飛行士の累積被曝量上限について、がん発生リスクの3%までの上昇をめやすとしている。
「キュリオシティ」に搭載された放射線診断検出器(RAD)では、火星までの道のりで1日に平均1.8mSvの銀河宇宙線が計測された。現在の推進システムのペースで火星まで行った場合、許容量を超えてしまいそうな量だという。太陽宇宙線については、比較的低エネルギーでシールド防護しやすく、また太陽が静穏な時期だったこともあり、全放射線量の3%にとどまっている。
RADによる計測は現在も火星地表で継続中だ。こうした計測結果は、宇宙放射線の性質の理解や、それをシャットアウトする宇宙船の構造の検討など有人ミッション計画に利用される。