1200光年彼方の星で天体衝突による塵の増加

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【2014年8月29日 カブリIPMU

赤外線衛星「スピッツァー」の観測で、1200光年彼方にある星の周囲のダストが爆発的に増加するようすがとらえられた。2つの岩石天体の大規模衝突によるものとみられ、地球のような岩石惑星が作られる途上での重要な過程をリアルタイムに観測した初めての例となる。


観測されたダストの量

ダストが放射する赤外線の強度。ダスト急増以降の周期的な増減は、ダストの雲の公転により地球から見える部分が変化するため、長期的な減少はダストが衝突を繰り返してさらに細かくなり、恒星から離れていくためと考えられる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

小惑星の衝突の想像図

今回の観測データから推察される小惑星の衝突の想像図。ダストの増加量から、直径100〜1000kmの小惑星がさらに大きな小惑星に秒速15〜18kmで衝突して砕け散ったと計算されている。クリックで拡大(提供:Kavli IPMU)

ほ座の散開星団NGC 2547と恒星ID 8の位置

恒星ID 8(中央)は、ほ座の散開星団NGC 2547(左下付近)に属する比較的軽く暗い星だ(提供:ESO/Digitized Sky Survey 2/Kavli IPMU)

米・アリゾナ大学などの国際チームは、衛星「スピッツァー」を用いた赤外線観測で、ほ座の方向約1200光年彼方にある若い恒星ID 8の周囲にあるダスト(塵)の量を2012年5月から調べていた。この恒星が昼間の空にあった2012年8月〜2013年1月に観測を中断し、2013年1月に観測を再開したところ、ダストの量が中断前と比べて劇的に増加していた。

「突然のダストの増加は、2つの巨大な小惑星が衝突したためだと考えられます。衝突によって細かな砂粒くらいの粒子が雲をつくり、その後粒子同士が衝突を繰り返してさらに細かくなり、ゆっくりと恒星から離れていった様子もわかりました」(論文主著者のホワン・メングさん)。

これまでの観測でも小規模の衝突によるとみられるダストの増減は観測されていたが、大衝突の前後で観測データが得られたのは今回が初めてのことだ。

地球のような岩石惑星は、若い恒星(地球にとっての太陽)を周回するケイ素などのダストが衝突や合体を繰り返しながら成長し、約1億年かけて作られるとされる。今回の結果は、私たちの住んでいる地球のような岩石惑星が作られる過程で起こる劇的な現象を、初めてリアルタイムに観測したものと言える。

研究チームではID 8のダスト量を今後も継続して観測し、この星や他の星でこうした大規模な衝突が起こる頻度を探っていく。