1200光年彼方の星で天体衝突による塵の増加
【2014年8月29日 カブリIPMU】
赤外線衛星「スピッツァー」の観測で、1200光年彼方にある星の周囲のダストが爆発的に増加するようすがとらえられた。2つの岩石天体の大規模衝突によるものとみられ、地球のような岩石惑星が作られる途上での重要な過程をリアルタイムに観測した初めての例となる。
米・アリゾナ大学などの国際チームは、衛星「スピッツァー」を用いた赤外線観測で、ほ座の方向約1200光年彼方にある若い恒星ID 8の周囲にあるダスト(塵)の量を2012年5月から調べていた。この恒星が昼間の空にあった2012年8月〜2013年1月に観測を中断し、2013年1月に観測を再開したところ、ダストの量が中断前と比べて劇的に増加していた。
「突然のダストの増加は、2つの巨大な小惑星が衝突したためだと考えられます。衝突によって細かな砂粒くらいの粒子が雲をつくり、その後粒子同士が衝突を繰り返してさらに細かくなり、ゆっくりと恒星から離れていった様子もわかりました」(論文主著者のホワン・メングさん)。
これまでの観測でも小規模の衝突によるとみられるダストの増減は観測されていたが、大衝突の前後で観測データが得られたのは今回が初めてのことだ。
地球のような岩石惑星は、若い恒星(地球にとっての太陽)を周回するケイ素などのダストが衝突や合体を繰り返しながら成長し、約1億年かけて作られるとされる。今回の結果は、私たちの住んでいる地球のような岩石惑星が作られる過程で起こる劇的な現象を、初めてリアルタイムに観測したものと言える。
研究チームではID 8のダスト量を今後も継続して観測し、この星や他の星でこうした大規模な衝突が起こる頻度を探っていく。