前回のトピックスのカノープスですが、もうひとつ課題がありました。地平線付近の星は大気の屈折で浮き上がって見えます。角度にして20分、ほぼ月の大きさに相当する分だけ浮き上がるのです。結構大きいですよね。
これを再現するためには、天体の位置を地平座標まで計算してから高度に応じて位置を変えていけばいいのですが、その分CPUパワーを必要とします。念願かなってこれが実現できたのが2002年の
からでした。これで完璧なカノープスの見え方を再現できます。ただし、大気による浮き上がりは天体の位置が変わるだけではありません。水平線や地平線に沈む太陽を見ていると、縦方向につぶれているのがわかるででしょう。これは、太陽の上の縁と下の縁では大気による浮きあがり具合が違うことが原因です。地平線に近いほど大気による浮き上がりは大きくなるので、つぶれたように見えるのです。
ステラナビゲータでは、太陽や月のように面積のある天体でも大気による浮き上がりを正確に計算しているので、単純につぶれた円でなく極端に言うとオムスビのような形につぶれます。そのおかげで、日没帯食などの現象も見たままに再現することができるのです。画像は1992年1月4日のロサンゼルス金環日食を再現したもので、縦方向につぶれながら沈んでいく様子を忠実に再現しています。残念ながら実物の日食は雲に阻まれて見えませんでしたけど。
ちなみに、日食帯の端(日の出や日の入り)のラインですが、大気による浮き上がりは計算には入れていないので、実際にはその外側でも日食を見ることができます。