恒星に対する月の動きを、詳しく見たことはありますか。
金星食やすばる食などを見ていると、月が恒星に対して動いていく様子がわかりますね。そこで、月の動きに合わせて追尾して撮影すれば面白い写真ができるのになあ、と思うところです。しかし、赤道儀のなかには恒星時追尾だけでなく太陽追尾の機能を持つものもありますが、月追尾機能はなかなかありません。太陽より月の撮影の方が長い露出時間が必要(とくに皆既月食の時などはそうです)なのに、どうしてでしょう。実はステラナビゲータを使うとその理由がわかります。
まず、表示形式を赤道座標にして、赤道が星図の中央を通るようにします。表示の視野範囲は120度にしておきましょう。ここで光跡残しをオンにして、1時間おきのアニメーションを実行してください。
月は、1日を周期にして波打ったように動いていますね。しかも速度も一定ではないようです。何故そうなるのか考えてみてください。先日、天文部員の高校生にこの動きを見せて理由を考えてもらったところ、真剣に考え込んでいました。たぶん、天文ファンでもこの動きを知っている方は少ないでしょう。
理由は、観測者が地球の自転とともに動いていくために、一日の間で視点位置が大きく変わるからです。月までの距離約38万kmに対して、観測者の位置は一日1万km以上も変わります。自転によって、観測者が西から東に動くので赤経方向の視差が発生し、月の移動速度の変化となって現れます。また、地球の自転軸が傾いているので、月の出から南中、没の間で赤緯方向の視差も発生し、月の移動経路が波打ったような形になるのです。
実はこの動きは
のデバッグ中に発見して、バグではないかと大いに悩んだのです。調べた結果「ステラは正しい」ということになり、驚いたのを覚えています。そんな動きをする月なので、赤道儀で追尾するには、コンピュータで2軸を可変制御しなくてはいけないのです。