コホーテク彗星(1974年) C/1973 E1

1973年に発見されたコホーテク彗星は、近日点を通過する時にマイナス等級の明るさに達する大彗星になると予報されました。しかし実際はあまり明るくならず、彗星の明るさの予想の難しさを知らされました。


(神原重見氏撮影のコホーテク彗星の写真)

タイトル:
「コホーテク彗星」
撮影者:
神原 重見
撮影日時:
1974年1月7日 17時50分、露出 20秒
撮影地:
千葉県 飯岡海岸
撮影機材等:
オリンパス M-1、M-ズイコー 50mm F1.4開放、フジカラー R-100、IAフィルタ使用
撮影者コメント:

約30年ぶりに古いスライドフィルムからダイレクトプリントしてもらいました。あまり退色せずに、当時の茜色がよみがえり、少し感動しました。私にとって初めて彗星らしく撮れたコホーテク彗星の写真です。C/1973 E1と言うよりも、1973fの方がなじみがあります。使用したカメラはオリンパス M-1(OMでないところに注目!)M-zuiko auto 50mm F1.4開放にて夕焼けの中、金星、木星と並んだ彗星の勇姿です。金星が九十九里の海面に映えている点にもご注目ください。まだまだ空の暗かった30年ほど前に、一生懸命写した思い出の一枚です。


(佐藤崇氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
佐藤 崇
撮影日時:
1974年1月10日 17時55分、露出 2分
撮影地:
宮城県黒川郡大和町落合相川
撮影機材等:
コニカオート S2EL 45mm F1.8開放、トライ-X、タカハシ 65mm屈折赤道儀にて手動ガイド
パンドール(18度、12分)
撮影者コメント:

私が高校生の時、星に一番のめり込んでいた時に現れた彗星です。前評判では、金星よりも明るくなると言われていましたが、それほど明るくはなりませんでした。今は亡き父親から譲り受けたコニカで夢中で写真を撮り続けました。自分で現像をし、暗室にこもってプリントをしていましたが、印画紙からコホーテク彗星の姿が浮き出てきたときの感動は今でも忘れることができません。30年ほども前のことですが、金星、木星、コホーテク彗星のトライアングルは、今でもはっきりと脳裏に焼き付いています。


(高山和久氏撮影のコホーテク彗星の写真)

タイトル:
「木星・金星とコホーテク彗星」
撮影者:
高山 和久
撮影日時:
1974年1月10日 18時0分0秒、露出 20秒
撮影地:
栃木県矢板市
撮影機材等:
アサヒペンタックス SP、スーパータクマー 55mm F1.8開放、フジクローム R100
撮影者コメント:

期待したほど明るくはならなかったが、彗星の姿としてはヘール・ボップ彗星なんかよりは美しかったような気がします。この写真は街の東側にある公園の小高い丘の上から撮影したものですが、当時のこの季節の大気感まで蘇ってくるようで、いちばん気に入っているショットです。現在、当地の夜空にはサーチライトが回転しており、最悪の環境となってしまい、満天の星空はコホーテク彗星とともに過去のものとなってしまいました。


(早苗外松氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
早苗 外松
撮影日時:
1973年12月2日 5時1分、露出 2分
撮影地:
埼玉県 顏振峠
撮影機材等:
キヤノン FTb、FL 135mm F2.5→4、インフォード HP-4、TS式50mm屈赤に同架、ガイド撮影
自家現像
撮影者コメント:

光度が低く、双眼鏡で見つけるまで、ずいぶん時間がかかった覚えがあります。


(榎本孝雄氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
榎本 孝雄
撮影日時:
1974年1月9日 17時54分、露出 30秒
撮影地:
埼玉県さいたま市桜区
撮影機材等:
アサヒペンタックス SV、105mm F4、トライ-X、10cm反射赤手動ガイド、固定撮影
撮影者コメント:

思ったよりも明るくならなかった彗星でしたが、まだ若かったせいもあって、今までの彗星観測の中で一番長く追いかけた思い出があります。ウィークデーの日も車で2時間以上もかけて東秩父まで行き、近日点通過前の姿を撮影し、一睡もせず、そのまま会社へ直行した事もありました。


(桑原康吉氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
桑原 康吉
撮影日時:
1974年1月6日 18時15分、露出 30秒
撮影地:
表富士五合目駐車場
撮影機材等:
ニコマート FTn、 ニッコール 50mm F2開放、コダカラーX
撮影者コメント:

表富士五合目駐車場で撮影したものです。撮影から30年が過ぎましたが、この彗星が私の見る初めての彗星でした。当日は幸い積雪は無かったのですが寒風の中、観望しているのは我々だけでした。写真をみるたびに感動が思い出されます。彗星の左の輝星は金星と木星です。


佳作

(伴良彦氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
伴 良彦
撮影日時:
1974年1月10日 18時23分、露出 25秒
撮影地:
長野県南安曇郡梓川村丸田
撮影機材等:
ペンタックス SP、SMCタクマー 55mm F1.8開放、トライ-X、固定撮影
パンドール(20度、16分)
撮影者コメント:

アルバイトして初めて買った自分のカメラに、初めて収まった彗星がコホーテク彗星でした。当日はまだ赤道儀を持っていなくて、星野撮影といえば固定撮影しかできませんでした。本当はもっと早い時期に撮影をしたかったのですが、その赤道儀を購入するために、またアルバイトをしていて、こんな時期まで撮影できませんでした。それでも、淡く長い尾を見たときは、本当にうれしかったことを思い出します。当時は、鼻をつままれてもわからないほど、本当に空が暗かった。でも、こんな田舎でも、あの時のような空はもうありません。

カメラを購入するためにアルバイト、赤道儀を買うためにアルバイトと、泣かせてくれるコメントです。同じような経験をした人も多いのではないでしょうか。しかも“本当に空が暗かった”というコメントも実感がこもっています。(編集部)


(金野栄敏氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
金野 栄敏
撮影日時:
1974年1月10日、露出 10秒
撮影地:
岩手県花泉町
撮影機材等:
ニコン Nikomat FTn、Nikkor 50mm F1.4、フジ ネオパンSSS、固定撮影
パンドール(22度、12分)
撮影者コメント:

私が肉眼で初めて見た彗星は、中学生の頃のコホーテク彗星でした。黄道光の中に木星と金星、そして尾をたなびかせた彗星が印象的でした。西空が開けた場所まで自転車にカメラと三脚を積み込み、寒さに凍えながら移動した事を憶えています


(田中千秋氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
田中 千秋
撮影日時:
1974年1月11日 18時過ぎころ
撮影地:
千葉県松戸市
撮影機材等:
ミノルタ SRT101、ロッコール 200mm F4開放、トライ-X、TS式50mm屈折赤道儀にて手動ガイド
撮影者コメント:

大きな期待が寄せられたこの彗星は、ベネット彗星のような明るい彗星とはならず、都会地ではかろうじて見つけられる程度でした。双眼鏡で見つけ、手動ガイドで追尾撮影して撮りました。


(森田宏明氏撮影のコホーテク彗星の写真)

タイトル:
「夕空のコホーテク彗星」
撮影者:
森田 宏明
撮影日時:
1974年1月13日 18時50分ころ、露出 20秒
撮影地:
神奈川県藤野町
撮影機材等:
ペンタックス SV 55mm F1.8開放、トライ-X
パンドール(20.5度、16分現像)
撮影者コメント:

“今世紀最大の彗星”という前評判ほどではなくても、固定撮影でこれだけ写ればやはり大彗星でしょう。オイルショックの余波で東京の夜空が多少は暗くなったころで、私は1973年の11月から翌年2月までに合計24夜見ました。写真は大学の天文部(地文研)の仲間と行った神奈川県藤野町で撮影したもので、彗星の上にはみずがめ座のY字が見えます。双眼鏡では10度位の尾が見えました。


アドビシステムズ賞

(津組晴彦氏撮影のコホーテク彗星の写真)

撮影者:
津組 晴彦
撮影日時:
1974年1月初旬 18時ごろ、露出 10秒?
撮影地:
兵庫県三田市
撮影機材等:
ペトリV6 II、スーパーコムラー 135mm F2.8、トライ-X(モノクロ)、固定撮影
Photoshopで色変換
撮影者コメント:

確か中学生の頃、大彗星がやって来るということで、父にせがんで空の暗い田舎に連れていってもらった。下見もなく行ったので草木の茂る現地で、西空が開けて見える場所がなかなか見つからない!早く撮影しないと地平線に没してしまう!必死で雑木林をかきわけながら汗だくになっていた。すると、突然視野が開けた!そこには鋭く輝く金星に負けずに並ぶコホーテク彗星があった!当時としては一番安い一眼レフと望遠レンズ(ペトリとコムラー、これも父にせがんで買ってもらったもの)で、震える手で狙いを定めた。なぜか必死に撮影した記憶しか残っていない。

今回のコンテストでは、過去に撮影してアルバムなどに眠ったままになっているプリントやネガをスキャナで読み取り、デジタル処理した作品の応募を期待していました。津組さんはをモノクロ作品にPhotoshopで処理して色をつけました。コメントでは撮影時の必死さも伝わってきます。(編集部)