想定外の軌道を持つ「ミニ海王星」を発見

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赤色矮星の周りを公転する系外惑星が新たに発見された。その大きさや質量から、海王星に似た「ミニネプチューン」とみられ、想定外の楕円軌道を持つものも含まれている。

【2024年6月18日 アストロバイオロジーセンター

アストロバイオロジーセンターの堀安範さんたちの研究チームは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」と地上望遠鏡による連携観測から、4個の赤色矮星を回る系外惑星を新たに見つけた。これらの惑星は「スーパーアース(地球よりやや大きな岩石惑星)」と海王星(地球半径の約4倍、地球質量の約17倍)の中間に当たる大きさで、「ミニネプチューン(サブネプチューン)」と呼ばれる規模の惑星だ。

惑星 TOI-782 b TOI-1448 b TOI-2120 b TOI-2406 b
公転周期(日) 8.02 8.11 5.80 3.08
半径(地球半径) 2.740 2.769 2.120 2.830
質量(地球質量) < 19.1 < 19.5 < 6.8 < 15.6
距離(光年) 170 240 105 180
領域 からす座 ケフェウス座 カシオペヤ座 くじら座

新たに発見・確認された系外惑星。質量はいずれも上限値

堀さんたちはTESSが検出した系外惑星候補を、スペイン・テネリフェ島テイデ天文台の1.52m TCS望遠鏡やハワイ・ハレアカラ天文台の2m FTN望遠鏡などを使って追観測し、TOI-782 b、TOI-1448 b、TOI-2120 bの3個の系外惑星を新たに発見した。また、惑星であることがすでに判明していたTOI-2406 bについても、地上観測で重元素量などを新たに求めた。

今回見つかったミニネプチューンの半径は地球の2~3倍とみられる。また、惑星の重力によって主星が動く速度をすばる望遠鏡の近赤外分光装置「IRD」で観測した結果から、惑星の質量はいずれも地球の20倍以下と見積もられた。

4個の惑星の質量と半径の関係は、岩石惑星よりは海王星のような惑星に似ている。そのため、これらの惑星は水の氷や水蒸気のような揮発性物質を固体の核や大気として含んでいる可能性が高いようだ。

ミニネプチューンの軌道のイメージ図
発見された4つのミニネプチューンのイメージ図。中心星に近い惑星は時間とともに円軌道へと変化しやすいが、今回発見された系外惑星のうち3個は、10億年以上の年齢を持つにもかかわらず楕円軌道を保っているとみられる(提供:アストロバイオロジーセンター)

4個の惑星は全て、年齢が10億歳以上の赤色矮星の周りをおよそ8日以下の短い周期で公転している。そのうち少なくとも3個(TOI-782 b, TOI-2120 b, TOI-2406 b)は、離心率が0.2~0.3の楕円軌道を持つらしいこともわかった。一般に、赤色矮星のごく近くを回る惑星は、主星からの潮汐力を受けて変形する「潮汐摩擦」によってエネルギーを失い、公転軌道が楕円から円に近づいていくことが知られている。だが、これら3個の惑星は誕生から長期間が経っていると考えられるにもかかわらず、楕円軌道を保っている。これは、惑星の内部構造が潮汐力の影響を受けにくいものである可能性を示唆するもので、やはり岩石惑星よりは海王星のような惑星に似ていることを示すデータだ。

今回見つかったような公転周期の短いミニネプチューンは、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大気観測の目標天体としても重要だ。さらに詳しい追観測が行われれば、短周期ミニネプチューンの内部組成や大気の性質をより深く理解できるかもしれない。

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