防衛通信衛星「きらめき3号」搭載のH3ロケット4号機、打ち上げ成功

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日本のXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を搭載したH3ロケット4号機が、11月4日15時48分に種子島宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは計画通りに飛行し、衛星は正常に分離されて予定の軌道へ投入された。

【2024年11月5日 JAXA

11月4日15時48分00秒(日本時間、以下同)、日本のXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を搭載したH3ロケット4号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。当初は10月20日に予定されていたが、第2段エンジンの燃焼室冷却バルブに関連した部品の交換や天候不良などのため、4回にわたり延期されていた。

H3ロケット4号機の打ち上げ
H3ロケット4号機の打ち上げ(提供:JAXA

ロケットは予定のルートを順調に飛行し、16時17分に正常に衛星が分離され打ち上げは成功した。H3ロケットの打ち上げ成功は3回連続となる。

無事軌道に投入された「きらめき3号」は本年度中に運用を開始する予定である。防衛省のXバンド防衛通信衛星は、2018年4月打ち上げの「きらめき1号」と2017年1月の「きらめき2号」とを合わせた3基体制となり、通信の大容量化と通信速度の向上が実現する。

今回の打ち上げでは、H3ロケットとしては初めて衛星が静止トランスファ軌道(GTO;Geostationery Transfer Orbit)へ投入された。また、第1段エンジンの燃焼段階で燃料を消費して軽くなったロケットの加速を抑えて、搭載する衛星の負荷を軽減するためにエンジンの推力を絞る「スロットリング」が3号機と同様に実施され、正常に作動したことがリアルタイムデータにより確認された。

さらに今回は、将来の「ロングコーストミッション」を見据えたデータも取得された。種子島から打ち上げられる静止衛星は、まず静止トランスファ軌道へ投入され、その後、衛星自身が燃料を消費して赤道上空の高度3万6000kmの静止軌道まで飛行する。これは、種子島が赤道からやや高い緯度にあり、28.5度の軌道傾斜角が付くためだ。

JAXAが実施を目指す「ロングコーストミッション」では、ロケットが宇宙空間を長時間飛行(ロングコースト)し、2段エンジンを着火(再々着火)することで、軌道傾斜角を約20度に抑えて衛星を静止軌道により近い軌道へ運び、衛星自身が消費する燃料を低減することができる。

この技術はH-IIAロケットの「高度化プロジェクト」として開発されたもので、今回衛星の分離後にロケットの2段目が慣性飛行中にエンジンの温度や圧力などに関わる多くのセンターのデータが取得された。JAXAでは、得られたデータと解析モデルとを突き合わせた評価などの結果を来年度打ち上げ予定の技術試験衛星9号機(EST-9)へ適用し、第2段エンジンの再々着火の実施を目指している。

軌道傾斜角の違い
静止衛星が投入される軌道の傾斜角の違い。(上)現在、種子島から打ち上げられる静止衛星は、28.5度の軌道傾斜角が付いた静止トランスファ軌道へ投入されたあと燃料を使って赤道上空の高度3万6000kmの静止軌道まで飛行する。(下)将来的には、H3ロケットが宇宙空間を長時間飛行(ロングコースト)して、2段エンジンを着火(再々着火)することで、軌道傾斜角を約20度に抑えた静止軌道により近い軌道へ衛星を運べるようになる(提供:JAXA

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