探査機「はやぶさ2」、来年7月5日に小惑星トリフネをフライバイ

このエントリーをはてなブックマークに追加
小惑星「トリフネ」に向けて航行中の探査機「はやぶさ2」が、来年7月5日にトリフネをフライバイする計画が公表された。「はやぶさ2」は相対速度5km/sほどの高速フライバイ探査に挑戦する。

【2025年12月25日 JAXA宇宙科学研究所

探査機「はやぶさ2」は、小惑星「リュウグウ」のサンプルを2020年12月6日に地球に届け、その後は「はやぶさ2拡張ミッション(はやぶさ2♯)」として航行を続けている。この拡張ミッションでは、2026年に小惑星「トリフネ」((98943) Torifune)を、2031年に小惑星「1998 KY26」をそれぞれ探査する計画だ(参照:「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星は細長いかも」「はやぶさ2」が次に目指す小惑星、イトカワと類似」「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星に「トリフネ」と命名」)。

「はやぶさ2拡張ミッション」のシナリオ
「はやぶさ2拡張ミッション」のシナリオ(提供:JAXA宇宙科学研究所、以下同)

JAXAは「はやぶさ2」がトリフネをフライバイ(接近通過)する日付を2026年7月5日と発表した。平均直径約450mと推定されるトリフネの至近距離を、相対速度5km/sほどの高速で通り過ぎながら観測する計画だという。フライバイ探査は一瞬で終わるため、トリフネのどの面を観測するとより良いデータが得られるか、検討が進められている。

本来フライバイ探査を目的とした探査機(冥王星を探査した「ニューホライズンズ」など)には、離れた距離からでも良いデータが得られる観測装置が搭載されている。しかし、元々ランデブー用探査機(対象天体の近くに留まる探査機)である「はやぶさ2」には、そのような装置は搭載されていない。そのため、トリフネのフライバイではできるだけ接近距離を小さくして高解像度の画像を取得することを目指している。

また、最接近距離が小さければ、接近していく際にカメラの視野にトリフネが入り続ける点もメリットとなる。「はやぶさ2」運用チームでは、トリフネの表面から1kmくらいまで機体を接近させることができないか精査しているが、トリフネの正確な大きさや形がわかっていないため、慎重な判断が必要とされる。

最接近距離の違いによる探査機の運用
最接近距離の違いによる探査機の運用の差。①の軌道は安全にフライバイできるが、距離が遠いため解像度の良いデータが得られず、探査機の向きを大きく変える必要も生じる。③は探査機の向きを小惑星方向に固定したまま至近距離まで接近できるが、探査機が小惑星に衝突してしまう。②のようにできる限り小惑星に近いところを通過させると、解像度の良いデータが得られ、最接近直前まで探査機の姿勢を大きく変更する必要がないが、精密な計算や制御が要求される

トリフネをフライバイする「はやぶさ2」のイラスト
トリフネをフライバイする「はやぶさ2」のイラスト(提供:©池下章裕)

〈参照〉

〈関連リンク〉

関連記事