瞬く間に生まれ変わったアカエイ星雲の中心星
【2016年9月16日 Hubbe Space Telescope】
宇宙で起こっているほとんどのプロセスの時間スケールは人の寿命に比べてあまりに長く、その変化を観測するのは難しい。しかし例外的に、ほんの数十年で星の進化の様子をリアルタイムに見せてくれる天体もある。
地球から2700光年彼方に位置する、さいだん座の「アカエイ星雲」は、中心星SAO 244567が放出した物質が星のエネルギーを受けて光っているものだ。その中心星の表面温度は、1971年から2002年の間に摂氏4万度ほどまで急上昇し、それまでの約2倍にまで達した。そしてハッブル宇宙望遠鏡(HST)による最新の観測では、星の表面温度が下がりつつあること、さらに星の膨張が始まっていることが示されている。
物質を放出する前にこの星の質量が太陽の3~4倍あったなら、急激な温度上昇の説明もつくのだが、観測データによればこの星の元の質量は太陽ほどしかなかったはずだという。こうした低質量星は、はるかに長い時間をかけて進化するのが普通であり、数十年単位での温度の急上昇は謎だ。
HSTによる観測を行った英・レスター大学のNicole Reindlさんたちは、SAO 244567のような低質量星で温度の急上昇が起こるのは、星の核の外側にあるヘリウムが燃える「ヘリウム・シェル・フラッシュ」現象によるものだと考えている。この説によれば、中心星は膨張して温度が下がり、星の進化過程の前段階に戻るだろうということだ。そして、まさにその状態が今回観測で確認されたことになる。「フラッシュによる核エネルギーの放出で、コンパクトな星が再び巨星サイズまで膨張します。星の再生シナリオです」(Reindlさん)。
SAO 244567は温度上昇と低下の両方が観測された初の例だ。しかし、現在の星の進化モデルではSAO 244567のふるまいを完全には説明できない。「計算を修正すれば、星そのものや惑星状星雲の中心星の進化について、より深い知見が得られるかもしれません」(Reindlさん)。
〈参照〉
- Hubble Space Telescope: Astronomers observe star reborn in a flash
- MNRAS: Breaking news from the HST: The central star of the Stingray Nebula is now returning towards the AGB 論文
〈関連リンク〉
- ESA/Hubble: https://www.spacetelescope.org/
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