大銀河の材料となる、矮小銀河の群れ
【2017年1月24日 アメリカ国立電波天文台】
矮小銀河は、星やガスが天の川銀河の100分の1~1000分の1しかない小さな銀河だ。こうした小さい銀河が衝突や合体を繰り返して大きい銀河へと成長していくと考えられているが、矮小銀河が合体しつつあるような銀河の集団はこれまで見つかっていなかった。
アメリカ国立電波天文台のSabrina Stierwaltさんたちの研究チームは、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)のデータや様々な光学望遠鏡の観測データを分析し、矮小銀河からなる銀河の集団を7つ発見した。各集団で銀河同士は重力的に結びついており、最終的にはそれぞれ合体して1つの大きな銀河になると考えられる。
StierwaltさんたちはまずSDSSのデータをくまなく調べ、相互作用している矮小銀河のペアを探した。次に、これらのペアのうちで、より大きな銀河集団の一部と思われるものを探し出し、チリのマゼラン望遠鏡と米・ハワイのジェミニ望遠鏡を使って銀河の距離を調べた。そして、矮小銀河が見かけ上同じ方向にあるのではなく、実際にほぼ等距離にあり重力的に結びついていることを確かめた。
今回の成果は、現在の宇宙に見られる天の川銀河のような成熟した銀河が、より小さな銀河同士が数十億年前に合体して形成されたとする説の、観測的な証拠となる。
「大きな銀河ができるには、多くの小銀河が集まならなくてはなりません。私たちは初めて、そのプロセスの第一歩であるサンプルを見つけました。この発見が将来の矮小銀河群の研究を可能にし、天の川銀河のような大銀河の形成に関する見識が得られることを願っています」(Stierwaltさん)。
〈参照〉
- アメリカ国立電波天文台: Astronomers Find Seven Dwarf-Galaxy Groups, the Building Blocks of Massive Galaxies
- Nature Astronomy: Direct evidence of hierarchical assembly at low masses from isolated dwarf galaxy groups 論文
〈関連リンク〉
- SDSS: http://www.sdss.org/
- Las Campanas Observatory: http://www.lco.cl/
- ジェミニ望遠鏡: http://www.gemini.edu/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
関連記事
- 2024/07/04 天の川銀河の衛星銀河は理論予測の倍以上存在か
- 2024/01/09 最遠方銀河で理論予測を超える活発な星の誕生
- 2023/12/08 天の川銀河中心の100億歳の星は別の銀河からやってきたか
- 2023/10/26 AIが高速で描く超新星爆発の広がり
- 2022/11/21 貴金属に富んだ星が明かす、天の川銀河の形成史
- 2020/08/07 極めて若い銀河が現在の宇宙にも存在
- 2020/05/28 誕生から15億年後の宇宙に回転円盤銀河を発見
- 2020/02/20 矮小銀河のストロンチウムは4種の天体現象で作られる
- 2019/12/24 120億年前にすでにできあがっていた巨大銀河の核
- 2019/06/17 予想外に軽かった銀河中心ブラックホール
- 2019/05/08 星の重元素が語る天の川銀河の合体史
- 2019/03/05 新理論、ダークマターは軽くて散乱する
- 2018/11/19 天の川銀河を巡る矮小銀河のダンス
- 2018/11/07 100億年前に天の川銀河と衝突した銀河「ガイア・エンケラドス」
- 2018/11/05 小マゼラン雲の緩やかな死
- 2018/08/23 天の川銀河の周りに存在する宇宙最古の銀河
- 2018/05/24 近傍銀河の紫外線サーベイから作られた星団と恒星の初カタログ
- 2018/02/07 宇宙論の標準モデルで説明できない衛星銀河の運動
- 2017/08/08 クジラ銀河の周りに見つかった多くの「銀河の化石」
- 2017/08/03 天の川銀河の物質の半分は別の銀河からやってきた