天の川銀河には1000億個の褐色矮星
【2017年7月12日 RAS】
恒星と惑星の中間の質量を持つ星である褐色矮星は、太陽のように中心核で持続的で安定した水素の核融合を起こすには軽すぎるため、自ら光り輝くことがない天体だ。
褐色矮星の大半は1500光年以内に見つかっているが、これは単に褐色矮星が暗すぎるため遠いものは見つけにくいからである。ほとんどの褐色矮星は、小さく星の密集度が低い近傍の星形成領域で検出されている。
ポルトガル・リスボン大学のKoraljka Muzicさんと英・セント・アンドリューズ大学のAleks Scholzさんたちの研究チームは2006年に「SONYC(The Substellar Objects in Nearby Young Clusters)」と呼ばれるサーベイ観測を開始し、5つの近傍星形成領域で褐色矮星を探した。そして、観測対象の一つ、ペルセウス座の方向1000光年の距離に位置する星団「NGC 1333」では星の半分が褐色矮星で占められていることがわかった。
NGC 1333が特異なのかどうかを確かめるため、研究チームは2016年に、ほ座に位置する星団「RCW 38」に観測の眼を向けた。RCW 38では大質量星が密集しており、他の星団と比べると環境がかなり異なっている。
RCW 38は5500光年彼方と遠方に位置するため、褐色矮星はさらにかすかな存在となり、明るい星の隣に位置する褐色矮星を見つけ出すのは困難である。研究チームはヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTに設置されている補償光学カメラ「NACO」を使って約3時間の観測を行い、その結果と以前のデータとを合わせた。
その結果、RCW 38でも星の約半分が褐色矮星で占められていることがわかり、星形成領域における星の大小や星の密集具合は、褐色矮星の形成に大きな影響を及ぼさないことが確かめられた。「星団の種類に関係なく、褐色矮星は本当にありふれた天体だということが示されました。星団内で褐色矮星は恒星と一緒に形成されますから、膨大な数の褐色矮星が存在していることになります」(Scholzさん)。
ScholzさんとMuzicさんはSONYCサーベイの結果から、天の川銀河内に存在する褐色矮星の数を少なくとも250億~1000億個と見積もっている。さらに小さく暗い褐色矮星も数多く存在していることから、実際の数はもっと多いだろう。
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