多くの星は双子で誕生か、連星の起源
【2017年8月24日 CfA】
複数の星がお互いの周りを回り合う「連星系」がどのように形成されるのかは、天文学上の中心的な問題の一つだ。特に、連星系を成している恒星の質量傾向を探るために、分子雲の中で生まれる幼い星々の観測研究が多く行われてきた。たとえば、若い星ほど連星系を成している傾向が強いとする研究成果がある。
しかし連星系では、星同士の力学的作用で星が放り出されたり、逆に取り込まれたりするなど多くの要素が複雑に影響するため、課題となる関連性についてはっきりしたことはわかっていなかった。また、これまでの観測的研究の多くは、サンプル個数が少ないという問題もある。
米・ハーバード・スミソニアン天体物理センターのSarah Sadavoyさんたちの研究チームは、電波を使ったペルセウス座分子雲中の若い星のサーベイと、それらの星の周囲にある高密度物質のサブミリ波観測とを合わせて、24個の多重星系の存在を確認した。
星が埋もれている分子雲コアをさらに調べると、中にある連星はコアの中心部に位置する、つまり生まれた場所からほとんど動いていない幼い星々であることがわかった。これらの連星のおよそ半数が細長い構造の分子雲コアに埋もれていたことから、研究チームは、初期の段階から分子雲コアがそのような形をしていたと結論づけた。
観測による発見をモデル化した結果から、最も可能性の高いシナリオとして研究チームが主張しているのは以下のようなものだ。単独および連星を含むすべての星はまず連星系で形成され、その後に自ら生まれたゆりかごから放出されるか、または分子雲コア自体が崩壊して散り散りになっていく。ほんの一部の連星系では結びつきがより強まる。
同様のシナリオは他の研究でも示唆されてきたが、Sadavoyさんらの研究は、まだ塵に埋もれている非常に若い星の観測をもとにした成果としては初めてのものとなる。最も重要な結論の一つは、多くの塵から成る分子雲コアが、通常モデル化される単一の星ではなく、2つの星を誕生させる可能性が高いことだ。コアでは、これまで考えられてきた数の2倍の星の形成が進んでいるのかもしれない。
〈参照〉
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