触角銀河の腕に明るい超新星2007srが出現

【2007年12月21日 VSOLJ ニュース(184)】

触角銀河(アンテナ銀河)という名前で有名な、からす座の銀河NGC 4038に、明るい超新星2007srが発見された。発見時の明るさはおよそ12.9等で、中口径の望遠鏡でも観測可能だ。年末年始にかけてもっと明るくなる可能性もあるという。


VSOLJ ニュースより

(著者:島田雅史さん・山岡均さん(九大理))

今年も残すところ10日ばかりとなって、あわただしい毎日です。この時期になって、今年1番の明るさである12.9等の超新星が発見されました。中口径の望遠鏡などで観測可能な明るさを保っているので、超新星の観測納めというのも良いかもしれません。

この超新星は、12月18.53日(世界時、以下同様)に、もともとは地球近傍小惑星の発見を目指しているカタリナ全天サーベイによって発見されました。発見時の明るさはおよそ12.9等、今年見つかった超新星のうちでは、発見前画像ではより明るかった超新星2007itを除いて、超新星2007gi(VSOLJニュース177)と並んでもっとも明るいものです。超新星の位置は以下のとおりです。

  赤経: 12時01分52.80秒
  赤緯:-18度58分21.7秒 (2000年分点)
  NGC 4038の周辺星図と、DSS画像に表示した超新星

です。母銀河のNGC 4038は、もうひとつの銀河NGC 4039と衝突して形を大きく変えた渦巻銀河で、ふたつを総称して「触角銀河」と呼ばれる、特異な形で有名なものです。超新星は、南に伸びる腕の上にあります。

衝突している銀河では星が数多く生まれており、寿命の短い大質量の星が生涯を終える重力崩壊型超新星が多数誕生すると期待されます。実際、この銀河ペアでは、これまで1921A、1974E、2004gtと3個の超新星が出現しており、最後のものは重力崩壊型だったことが判明しています。

ところが、12月19.87日に兵庫県立西はりま天文台の内藤博之(ないとうひろゆき)研究員と、卒業研究のため同天文台を訪れていた九州大学4年生の坂根悠介(さかねゆうすけ)さん、阿南徹(あなんてつ)さんたちが、この天体のスペクトル観測を行ったところ、この超新星は、重力崩壊型ではなく、白色矮星が核爆発を起こしたものであることが確認されました。極大の数日前と推測され、これから年末年始にかけて、今と同じか、それよりも明るい姿で見えることが期待されます。

今回のように近傍の銀河に超新星が出現することは数少ないことですので、今後の観測や画像の解析に注目が集まります。


超新星2007srの位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

<参照>

  • カタリナ全天サーベイ:http://www.lpl.arizona.edu/css/index.html
  • ATEL 1337 (2007 Dec. 19)
  • CBET 1172: SUPERNOVA 2007sr IN NGC 4038 (2007 Dec. 19)
  • CBET 1173: SUPERNOVA 2007sr IN NGC 4038 (2007 Dec. 20)
  • CBET 1174: SUPERNOVA 2007sr IN NGC 4038 (2007 Dec. 20)
  • VSOLJニュース(184): 触角銀河の腕に明るい超新星2007srが出現

<関連リンク>

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