微生物は火星地球間を生きたまま移動可能、実験で確認

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国際宇宙ステーションで行われた実験で、紫外線の当たる宇宙空間に3年間さらされた微生物が生存していることが確認された。生命が惑星間を移動しうることを示唆する研究成果だ。

【2020年9月1日 東京薬科大学JAXA

微生物が隕石や彗星に乗って宇宙を移動することで、生命が惑星から惑星へと拡散すると考える「パンスペルミア」という仮説が、100年以上前に提唱されている。

JAXAと東京薬科大学をはじめとする26機関が参加した「たんぽぽ計画」では研究テーマの一つとして、国際宇宙ステーション(ISS)の曝露部に「デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)」という細菌の塊を2015年から3年にわたって配置し、実際に微生物が宇宙空間で生存できるのか、生命がどれだけ宇宙の長旅に耐えられるのかを調べてきた。デイノコッカス・ラジオデュランスは、放射線への耐性がとりわけ高いことで知られる細菌である。

微生物試料曝露パネル
(左)微生物試料曝露パネル。各パネルには、微生物サンプルを収納した20個のユニットが並んでいる。(右)ISS「きぼう」日本実験棟船外の簡易曝露実験装置(ExHAM)の上面に取り付けられた微生物試料曝露パネル(提供:JAXA/NASA)

この実験の結果から、微生物は太陽紫外線が当たる状態では数年間、当たらない状態で数十年生存できることが明らかになった。火星と地球の間を自然現象で移動するには平均すると数千万年かかるが、最短の場合には数か月から数年での移動が可能だ。つまり、微生物は紫外線に当たる条件下でも、火星と地球の間を生きたまま移動できることを示している。

過去の研究では、紫外線を遮断すれば微生物の胞子が宇宙空間で長期間生存できるという実験結果から、生命が岩石に守られながら惑星間を移動する「リソパンスペルミア(リソは岩石の意)」が提案されていた。今回の実験により、細菌が寄せ集まることで宇宙の環境に耐えながら移動する「マサパンスペルミア(マサは塊の意味)」の可能性も示されたことになる。

今回の実験は地上400kmを周回するISSで実施されたものだが、この高度は宇宙線などが地球の磁場にとらえられた「バンアレン帯」の内側であるため、惑星間空間のより強い放射線からは防御されている。今後はバンアレン帯の外側で微生物曝露実験を行うことで、パンスペルミア仮説のより良い検証ができると期待される。

「たんぽぽ計画」の紹介イラスト
「たんぽぽ計画」の紹介イラスト(提供:東京薬科大学細胞機能学研究室