系外惑星の大気に観測史上最も重い元素、バリウムを検出
【2022年10月18日 ヨーロッパ南天天文台】
系外惑星WASP-76 b(うお座)とWASP-121 b(とも座)は「ウルトラホットジュピター」と呼ばれる。軌道が恒星に近いため高温になっているガス惑星「ホットジュピター」の中でも、特に表面が熱い惑星に分類されるものだ。どちらの惑星の大気も摂氏2000度を超える高温で、WASP-76 bでは鉄の雨が降っているとする研究もある。
これほど超高温の惑星の大気がどのような性質をしているかは興味深い研究テーマだ。系外惑星の大気組成を知るには、主星の前を惑星が通り過ぎる際に惑星の大気に主星の光が吸収されて生じるスペクトルの変化を調べる。すると、大気に含まれる物質の痕跡を検出できる。幸い、ウルトラホットジュピターはこうした観測に適している。「こうした惑星はガス状で高温であるために大気が非常に広がっていて、小さい惑星や低温の惑星よりも観察や研究が容易です」(ブラジル・ポルト大学 Olivier Demangeonさん)。
ブラジル・ポルト大学のTomas Azevedo Silvaさんたちの研究チームは、チリに設置されているヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTでWASP-76 bとWASP-121 bを観測し、大気からバリウムを検出した。これは系外惑星の大気から見つかったものとしては、これまでで最も重い元素だ。
鉄の2.5倍も重いバリウムが両惑星の大気上層に含まれていたことに研究チームは驚いている。これほどの重元素が系外惑星の大気中の高層に存在しているメカニズムはわかっていない。「惑星の強い重力を考えると、バリウムのような重元素は大気の下層に急速に落ちると予想されます」(Demangeonさん)。
〈参照〉
- ESO:Heaviest element yet detected in an exoplanet atmosphere
- Astronomy & Astrophysics:Detection of Barium in the atmospheres of ultra-hot gas giants WASP-76b & WASP-121b 論文
〈関連リンク〉
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