国際隕石学会、120年前に落下した「越谷隕石」を登録
【2023年3月30日 国立科学博物館】
1902(明治35)年3月8日の明け方、現在の埼玉県越谷市(当時の埼玉県南埼玉郡桜井村大字大里)の中村喜八さんの田畑に、火山が噴火したような音とともに大きな穴ができ、1mあまりの底から重量4.05kgの隕石が発見された(同年4月25日付『東京朝日新聞』による)。
隕石は長らく中村さんの家に保管されていたが、2021年に越谷市郷土研究会を通じて国立科学博物館に成分分析の依頼があった。そこで、同館の米田成一さんたちがガンマ線測定で隕石の元素を調べたところ、アルミニウム26(26Al)が検出された。26Alは宇宙線によって生成される、半減期が約70万年の放射性核種であり、この物体が確かに宇宙に由来する隕石であることを示している。また、同じく宇宙線生成核種で半減期が約2.6年のナトリウム22(22Na)は検出されなかったことから、22Naが壊変し尽くしてしまう程度の期間、少なくとも数十年間は地上にあったことがわかり、落下日の記録と整合的であることが確認された。
さらに、隕石の組織観察や鉱物組成の分析により、この隕石が普通コンドライト(球粒隕石)、その中でもLグループに分類されることがわかった。球粒組織の残り具合から岩石学的タイプは4となり、合わせて「L4コンドライト」と呼ばれる。これは小惑星を起源するタイプの隕石だ。Lグループはコンドライトでは最多のグループだが、その中でL4は1割弱程度と少ない。
隕石の名称は落下地にちなんだものを付けることが慣例となっているため、米田さんたちは隕石の名称を「越谷隕石(Koshigaya)」として国際隕石学会(The Meteoritical Society)へ登録申請した。その後、審査・投票を経て2月16日付けで承認され、2月23日に同学会の隕石データベース「The Meteoritical Bulletin Database」に登録された。日本国内での54個目の隕石登録となる。
越谷隕石は現在、九州大学で貴ガス(アルゴンなど)の分析が進められている。その後、国立科学博物館で一部が公開される予定だ。