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藤井 旭のマックノート大彗星メモリアル

予想をはるかに超える見事なほうき星となって南半球の夜空を飾ったC/2006P1マックノート彗星。見に行くことができなかった天文ファンに、その雄姿をご覧にいれよう。前代未聞の姿を、過去に出現した大彗星たちと見比べてみるのもまた一興だろう。

名のある大彗星たちを蹴ちらし
史上最大級の彗星へ成長

事があまりに急だったので、多くの天文ファンがマックノート彗星の雄姿を拝むのに対応しきれなかったというのが本当のところだろう。私の場合は、オーストラリアのチロ天文台へ出かけるつもりのところに、彗星がたまたまやって来てくれたわけで、相乗りするかたちで心ゆくまでこの大彗星とお付き合いできることになったのは、なんともラッキーだった。まさにツイているとしか言うしかない。もちろん日本でも、正月明けのころから青空の中に明るく輝く彗星の姿は望遠鏡でとらえられ、撮影に成功した人も多く、天文ファンの間では大きな話題となっていたが、やはり南半球の夜空に登場してからがマックノート彗星の本番だったと言えるだろう。

オーストラリアの空で本格的にその雄姿を見せるようになったのは1月18日ごろからで、特に19日と20日の両夜は、日暮れ後に西よりの地平線上にくっきりと全体像が浮かび上がった。高く盛り上がるような幅広いダストの尾の光芒は、まるでオーロラか虹のようにも思え、見る者を圧倒した。明るい頭部から、ゆるやかにカーブしながら右に広がるダストの尾は、蒸気機関車の煙がドドッとはき出される様子そっくりのイメージで、はじめのうちはカメラを構えるのも忘れ、茫然として立ち尽くし見とれてしまうほどの素晴らしいものだった。

マックノート彗星の写真

昼間の青空の中で見えたマックノート彗星

近日点通過前後のころには、日本でも多くの天文ファンによってその姿がとらえられていたが、天頂近くで見えるオーストラリアでは、白昼に尾を引く姿が双眼鏡でもくっきり認められた。これは30cm反射望遠鏡でアップにして見たようす。

マックノート彗星の写真

扇のように広がった尾

頭部が地平線下に沈んだ後も、幅広く広がった尾はいつまでも見えていて、ドームのシルエットを浮かび上がらせる印象的な光景であった。

マックノート彗星の写真

夜明けの南東の空に姿を見せたマックノート彗星

天の南極方向へ移動したため、夕空に見えていた彗星は夜明け前には再び南東の空に姿を現し、一晩に二度お目にかかれるようになった。ただし、光度は3等級となり、満月近い月明かりに埋もれて、肉眼ではわかりにくくなってしまった(2月1日)。