第16回 和歌山大学で発見した創造の部屋
(星ナビ2006年4月号に掲載)
僕と同身長の尾久土氏の紹介で実現した講演会。その会場となった和歌山大で、図らずもモノ作りの理想の環境を発見し、大興奮!
尾久土(おきゅうど)正己氏といえば、LIVE!ECLIPSEの日食中継をはじめとした様々な活動をされている方として、ご存じの読者も多いだろう。その尾久土氏と初めてお会いしたのは、東京のFM局「J-WAVE」のイベントのトークショーの時だった。凄い活動をしている方がいるなあという印象が残り、それからしばらくご無沙汰していたのだけれど、昨年、大阪で開催されたプラネタリウム関連のシンポジウムで再会し、たまたま隣の席になったこともあって色々とお話をする機会があった。何しろ氏と私は凄い(?)共通点がある。身長が188センチでまったく同じ。しかもそれが、長年国内最大を誇っていた岡山天体物理観測所の188センチ反射望遠鏡の口径と同じなのである。まさに不思議な円(縁)ではないか! まあそれはよいとして、尾久土氏が講演の話を持ちかけてくれたのだ。そのときまで知らなかったのだが、氏は和歌山大学の教授をされているという。そこで学生向けにメガスターの話をしてくれないかと。
そんなわけで1月の下旬に、和歌山に赴いた。講演の方は、滞りなく済んだ。以上! では、それで終わりか? とブーイングが起きてしまいそうだが、実はそこで感銘を受けたのは、「クリエ」と名付けられた和歌山大学の共同施設だったのだ。それは、旋盤などの工作機械はじめ様々な測定器、備品、部品や材料までを整備した工作実験室のことである。
工学系の大学であれば、工作室の類は必ずあるもので、こういう設備自体は特筆すべきものではない。しかしこのクリエの素晴らしいところは、専門のテーマを持った研究室などだけでなく、サークルや一般の学生にも開放され、自由に活用できる点にある。電子部品や材料も整備され、お金を出せば自由に購入できるので、気兼ねなく自由に作業ができる。尾久土氏曰く、理系文系関係なく、さまざまな人が利用してくれているという。まさに目からウロコであった。
僕は常々思うのだけれど、世の中でモノ作りや科学に興味を持っても、その興味を自由に開花できる環境は乏しい。僕の学生時代は、親切な先生が、「本当はいけないんだけど……」と学校の機材や設備を使わせてくれたことがあったのだけど、今はあらゆる物事が管理されていく方向にあってそういうことが難しくなっている。学生などが誰かが決めたカリキュラムに沿って研究や物作りをすることはできても、それでは飽き足らない、自分で興味をもったテーマに取り組みたいという時、それを受け入れる土壌が余りに少ないと最近思うのだ。だから、こういうクリエのような設備には感銘を受けたし、こういう環境が様々な大学や企業などで整備されていったらと思うのだ。