第17回 メガスターの原点で、すべてを超える星空をめざす
(星ナビ2006年5月号に掲載)
川崎市青少年科学館――そこは、僕が子どもの頃に初めてプラネタリウムに興味を持った場所。自分にとって原点ともいえる場所で、新しい挑戦がスタートする。
子どもの頃、僕は川崎市青少年科学館でドームの中央にそびえ立つ凛々しい投影機の姿に憧れ、映し出される星空とそれを映し出すメカニズムに魅了された。当時の解説員だった若宮氏に、コンソールを実際に触らせてもらって興味の火がいよいよ燃え盛った。今の僕があるのは、まさにこの科学館での体験があったからこそといえる。
その川崎市青少年科学館で、2004年4月からメガスターIIの1号機「フェニックス」による通年公開が開始され、毎日見られるようになった。自分が初めてプラネタリウムに憧れた場所で、ついに自分自身で作り出した星空を映し出すことができるようになったのだ。自分の作品であるメガスターIIが、僕が子どもの頃から憧れてきた五藤光学製の投影機GMIIに並んで設置されているのは、なんと感慨深いことだろう。410万個の恒星を投影できるが、星空のみに特化したメガスターと、様々な補助投影機やシミュレーション機能の総合力を持ったGMIIは互いに補い合い、科学館解説員のアットホームな生解説と手を取り合って、毎月の星空の話題を市民に語りかけている。その魅力が話題を呼び、青少年科学館の入館者数は日を追う毎に増加していった。生田緑地の一角にある、一見静かなたたずまいの科学館は、いままさに上昇機運にある。ずっとこのままでいられたら、とも思う。
しかし、設備や機材の老朽化は、この状態を永遠に続けさせてはくれない。そのうえプラネタリウム界の変革の波の中で、青少年科学館といえども時代の要請や新しいニーズに応えていかなければならない。
今年の2月、小さな記事が新聞に掲載された。
それは、川崎市が青少年科学館への新型メガスターの設置をめざし、今年度、調査費を計上したというものだ。今度は脇役としてでなく、ドームの中心に据えられる文字通り科学館の顔になる、新しいメガスターの製作が具体化しはじめたのである。 これは責任が重い。今度は、GMIIのような投影機からの助けはないだろう。GMIIが行ってきたことを、メガスターでしっかり再現できなければならない。そして、今までのメガスターを含む全てのプラネタリウムを越えた、素晴らしい星空をも再現できるようにしたい。
イベントやコンサートなどで、今までのプラネタリウムと全く違う場所で、全く違う使い方を切り拓いてきたメガスター。しかし初めてプラネタリウムに憧れた場所で、プラネタリウムの基本に立ち返り、そこで最高の星空を作り出す、そういうチャレンジができることへの光栄と責任を思い、新しいメガスターの制作意欲がふつふつと高まっていくのを感じるのだ。