第20回 初の子ども向け番組に挑戦!徹底したリアリティを追求
(星ナビ2006年8月号に掲載)
メガスターというプラネタリウムの位置付け
昔から、「子どもたちに夢を」という言葉がしっくり来ない。プラネタリウムを作っている = 子どもたちに夢を与える、という図式に持っていかれるのに違和感を感じてしまうのだ。
そんな気持ちが影響しているのかはわからないが、僕のメガスターは大人をターゲットに据えた方向性をひた走ってきた。そして、今では大人向けのプラネタリウムは決して珍しくなく、新しい方向性として広く認知されるに至った。ついに新聞にもこういう見出しが躍るようになった。「プラネタリウムは大人のための癒しの場所である」と。けれど、そう言われると、大人のための癒し、という概念にもまた、どこかしっくりこないのである。
だからというわけではないが、今回、僕は子ども向け番組の制作に取り組むことにした。埼玉県の坂戸児童センターで7月3日から始まった新番組『七夕ランデブー』である。
子ども向けだからこそのリアリティ
子ども向け番組は未経験だったが、プロダクションに丸ごと依託する方法は選ばなかった。もっとメガスターの上映クオリティを上げたい。多少苦しくても、メガスターのプロが育つまでは、自分でひとつひとつの企画にちゃんと目を配っていこう、と決意したからである。
まず僕が考えたのは、子どもだましにはしたくないということだ。プラネタリウムに限らないが、子ども向けと名のつくものは、変なキャラクターが出てきたり、幼稚で陳腐なものが多いように見える。子どもというのは、難しい言葉や概念は理解できないかもしれないが、実に多くを感じ、大人以上に細かく物事を見ている。だから子どもだましは通用しない。僕がこだわったのはリアリティだった。だから、まず、映像や音を徹底的にリアルにこだわることで、子どもの鋭敏な感性に応えようと思ったのだ。
『七夕ランデブー』は、小学生の男の子と女の子が主人公。星を見たい気持ちが高じてとんでもない冒険に乗り出すストーリー。主軸となる展開はあまりに荒唐無稽なのだが、それを取り巻くできごとや描写、気持ちの変化は、極力リアルに描くことを心がけた。何より、作っている僕自身が、童心に帰ってワクワクするのである。僕があれほど抵抗感があった、子どもたちに夢を伝える、という言葉が今になってしっくりはまった気がした。
この番組は、子どもたちの心にどのように響くのだろうか。リアリティ指向子ども向け番組。少なくとも、メガスターにとって新たな挑戦であることは間違いない。