第23回 メガスター現象を世界に伝える(2)
(星ナビ2006年11月号に掲載)
今回は、先月号でお話したIPS(国際プラネタリウム協会)メルボルン大会参加での、デジタル化の波についてお話します。
驚くべきスピードで進むデジタル化
メガスターが初めて世に出たのは1998年に開催されたIPSロンドン大会で、予想外の反響を得た。これが全ての始まりだった。しかしその後、メガスターが国内でブレイクする一方、2年おきに開催されてきたIPSへの関わりはどちらかというと遠のく一方だったのだ。その間、世界のプラネタリウム界はデジタル化という新たな波の中で大きく変化してきた。4年ぶりのIPS参加、6年ぶりの発表となる今回のメルボルン大会で、大平メガスターはどのように受けとめられるのか、それが問われる時がきた。
濃霧のため、大幅に遅れて到着した僕を出迎えたのは、誰もいないガランとした会場だった。ほとんどの参加者は、すでにメルボルンプラネタリウムでのナイトセッションに出発してしまっていたためだ。しかし過去3回にわたって大会への参加・発表を行ってきた僕は、展示ブースに一歩足を踏み入れた瞬間、前回との雰囲気の変化をすぐに見て取ることができた。いわずもがな、デジタル化である。
前回参加のときと同じように、プラネタリウム界ではよく知られた各社が展示ブースを展開していたが、どのメーカーの展示も、内容こそ違えど、デジタル映像を使ったプラネタリウムやコンテンツだった。驚くなかれ、かつてピンホール式で展開していた小型のポータブルプラネタリウムですら、デジタル化されたものになっていた。光学式はほとんどないに等しい。デジタル化の洗礼に早くも一撃を食らわされた。
デジタルがクオリティの壁を突破?
そして翌朝、到着が遅れたため参加しそびれたメルボルンプラネタリウムでの発表の噂が飛び込んできた。それは、米国製のデジタルプラネタリウムによる星空が、光学式を上回るクオリティに達し、参加者を一様に驚かせたというものだった。機能面ではもとより光学式と比較にならない可能性を持つデジタル式が、解像度でも光学式を凌いだことで、もはや光学式は完全に過去のものになった――。参加者の声は、そう伝えていた。
何しろ見ていないので何とも言えない。もちろん、見てみたかった。とても悔しいが、仕方がない。山積みだった日本での仕事を半ば強引に調整して、参加できただけでも奇跡だったのだ。
そして、そんなことが気になりつつも、翌日には自分の発表が控えていた。現地で合流した通訳の方と共に発表資料をまとめたら、あとは自分の発表に臨むだけだった。そう、プラネタリウム暗黒大陸日本で起きていたメガスター現象を、いよいよ世界に伝える時がきたのだ。(次号へ続く)