第33回 坂戸から九州へ ―メガスター新コンテンツのゆくえ―
(星ナビ2007年10月号に掲載)
埼玉県坂戸児童センターでの再上映、そしていよいよ、4か月にわたる「みらい九州こども博」での公演がスタートします。
坂戸でつかんだ達成感
いよいよ埼玉県坂戸児童センターで、リメイク版「七夕ランデブー」が公開された。その反響は後で説明するとして、自分自身気づいた(驚いた)ことは、お客さんの声いかんによらず、自分ですっかり満足してしまったことだった。やりたいことをほぼやってしまった達成感なのかもしれない。ということはつまり、昨年旧バージョンを公開した際にときおり聞こえた不満の声が気になったのは、自分自身が満足していなかったからなのだ。
自信はあった。実際、番組を見た人たちの反応が違う。何が違うかというと難しいのだが、全体的に何かが底上げされている。伝えたいものが伝わるようになった。ある意味確信犯で演出した荒唐無稽さをそのままにして、映像作品として完成させることができた気がする。
全天周映像システム自体も、大幅な進化を遂げた。前回は問題を残したエッジブレンディング(複数の投影面の継ぎ目処理)や、オートジオメトリ(歪みを自動的に検出補正する新技術)も機能し、かつてない短時間での調整が可能なことが立証された。このあたりは、JAXAオープンラボによる研究成果でもある。色々な意味で、昨年までは煮詰まっていなかった部分が、今回完成の域に達したのである。東京現像所が保有する映像サーバの威力もあって、ハード、ソフトともに満足いく仕上がりとなった。
しかし安心してはいられない。すぐに坂戸の次のイベントが待っている。坂戸のオープンを見届けると、間髪を入れず「みらい九州こども博」への出展準備のために熊本に向かった。
九州にメガスター初上陸
熊本で驚いたのはドームである。坂戸を大きく上回る、直径18メートルのエアドームは、メガスターを上映するエアドームとしては過去最大だ。ちょうど接近中の台風の影響で、安全のため作業が一時中断したことで時間的余裕が減ってしまったが、坂戸での経験があり、おおむね準備はスムースであった。わずかながらシーンに改良も加え、同時上映の「星空の贈りもの」ともども予定通り完成、公開開始となった。
みらい九州こども博で上映する番組の選定については、正直なところ迷いがあった。七夕ランデブーは映像中心の番組である。メガスターを初めて見る九州のお客さんは喜んでくれるだろうか。それは番組の出来不出来ではなく、お客さんの見たいものに沿っているかという点においてである。
僕の中には、夏の星空をシンプルに解説するショート番組にした方が良いかも知れないという葛藤があった。主催者との協議で七夕ランデブーの上映が決定したが、七夕ランデブー1本でなく、あえて大人向けの番組「星空の贈りもの」も投入したのは、そのあたりの意識があったからだ。
何はともあれ、みらい九州こども博は始まった。これから4か月間、ひとりでも多くの子どもたちに、いや大人も含めた九州の大勢の人たちに、世界一と認められたメガスターの星空を、そして僕の描いた宇宙開発への夢を体験してもらって、それぞれの夢を描いてくれたらと思う。