第37回 メガスター、買いませんか?
(星ナビ2008年2月号に掲載)
変革期を迎えるプラネタリウム業界の中で、どんな1年に踏み出そうとしているのか。大平とメガスターの2008年が始まりました。
移動公演に明け暮れた2007年
2006年末にスタートした日本橋HDDVDプラネタリウムに始まり、国立極地研究所の「この地球の鼓動」、埼玉県の坂戸児童センターでの七夕ランデブーリメイク版投影、みらい九州こども博での公演、そして夏から秋に集中したメガスター?&10mエアドームのセットによる移動公演。その裏で着々と進めた宇宙航空研究開発機構(JAXA)オープンラボによる共同研究――2007年も怒濤のように過ぎ去った。
そして2008年である。2007年が大小の移動公演に明け暮れた1年であったとするなら、今年はどんな1年になるだろうか。おそらく移動公演は引き続き数多くこなしていくことになるだろうが、それだけではなく、開発成果の仕上げと、それを活用したメガスターの商品化がひとつのテーマになるだろう。
メガスター商品化の地盤強化
「メガスターの商品化」というと、川崎市青少年科学のフェニックス、日本科学未来館のcosmosなどが通年公開されている現状を知る人は、「今さら何を言っているんだ」と思われるかもしれない。けれどメガスターは認知度はあるが、商品としての完成度はまだ充分とはいいがたい。それはハードウェアだけの問題でなく、製造・サポート体制も含めた総合的な体制が未成熟であることによる。わかりやすくいえば、メガスターを買いたいというお客様にきちんと応じられていなかったのだ。
そこで、商品化に向けたいくつかの準備を進めてきた。ひとつが新小型プラネタリウム「メガスターゼロ」である。外観はほぼバスケットボールのサイズという超小型化と、軽量化を達成した。LED光源の採用によるメンテフリー化といった特長を備え、投影星数は200万個と、メガスターの名に恥じない性能を備えている。すでに先行する特注品の2台を学習塾に納入し、担当者からは「メガスターII以上に美しい」と評価をいただいているが、量産型はさらに性能を向上させる。設計製造と保守サービスを内部でなく、外部のエンジニアリング会社に委託し、これまで問題になりやすかった供給の問題を改善しているのも特長だ。
そしてメガスターIIの改良型であるスーパーメガスターIIの開発も大詰めである。これについてはまだ多くを語れないが、基本設計はメガスターIIのそれを踏襲しつつ、各部に多くの改良を加え、大幅な性能向上と保守性、信頼性を備えている。現行する4台のメガスターIIの運用で得た経験やノウハウを、充分に活かしたと思っている。
そしてデジタル化である。光学式プラネタリウムの星空を、完全にデジタル映像に置き換えるのはまだ難しい。けれどもJAXAとの共同研究で、デジタル映像と光学式プラネタリウムの像を自動で連動させ、天体画像を自在に表示できるシステムの完成が近づいた。ハードウエアとしての完成と、関連するサービスが立ち上げられることで、ようやくメガスターをお客様に提供できる準備が整ってきたところだ。それが2008年なのである。どうぞご期待ください。