第51回 10倍明るいメガスター
(星ナビ2009年4月号に掲載)
コンサートなどのイベントで活躍する特製メガスターについてお話しします。
悪条件下で最高の星空を
今年1月、「千葉県のららぽーと柏の葉」で、メガスターIIの星空の下、シンガーソングライター・岡本真夜さんのライブコンサートが行われた。
コンサートでのコラボは何度か経験があるが、こういったライブコンサートの大半は、星を投影するのに理想的な環境ではない。アーティストを照らす照明などの影響も大きい。今回のコンサートも映画館で行われることになっていた。
本番に先立つこと1か月ほど前に行われた初顔合わせミーティングでは、岡本真夜さん本人も交え、演出について突っ込んだ議論が行われた。かねてからメガスターとのコラボを願っていたという(こう言ってもらえるとうれしい)岡本さんと、できるだけお互いの経験とイメージを出し合いつつ、何ができて何が難しいか、現実的にベストでかつ満足できる演出について方向性を見つけていった。そして本番2週間ほど前、全員が集まって最終リハーサルを行い、演出の仕事は完結のはずだった。
しかし、そこでどうしても解決したい問題が発生した。星空が暗すぎたのだ。
会場はかなりの広さがある上、天井や壁がほとんど黒に近く、光を反射しにくい。したがって輝度の高いメガスターIIといえども、星像の明るさが不足してしまったのだ。
このようなシチュエーションに対応するため、メガスターIIには高輝度タイプというものがある。もともとテレビコマーシャルのプロモーション専用に作られた高輝度タイプは、通常型の10倍以上の輝度を実現し、これまでもコンサートやテレビ演出などで幾度となく威力を発揮してきた。しかし天体の日周運動、緯度変化などを再現できないという弱点があった。だが今回のコンサートでは、星の動きがなんとしても欲しかったのだ。高輝度の可動型があればその問題は解決する。
「高輝度の可動タイプを作りましょう」
ひとりのスタッフの申し出が全てを動かした。実は、こんなこともあろうかと、高輝度用の恒星原板はすでに作ってあったのだ。それを組み付ければできるはず……。短い期間で社内のスタッフの力を合わせて高輝度可動タイプは完成し、コンサート本番で見事に初舞台を飾ることができたのだった。
恒星数1000万個。輝度は通常の10倍以上。リハーサルとは全く違う鮮明な明るさの星空に、スタッフからも歓喜の声が上がり、コンサートも大成功だった。
高輝度可動タイプは、念願の機能だった。こうして今回申し分ないデビューの場を与えられて、今後は、さらにメガスターの可能性を切り拓いてくれるに違いない。