2001 マーズ・オデッセイを火星周回軌道へ投入することに成功
【2001年10月24日 JPL(Jet Propulsion Laboratory),NASA】 10/26 更新
NASA のジェット推進研究所 (JPL) の発表によると、同研究所はアメリカ時間 2001 年 10 月 23 日夜(日本時間 24 日昼)、火星探査機「2001 マーズ・オデッセイ(2001 Mars Odyssey」の火星周回軌道への投入に成功したという。
マーズ・オデッセイは、火星の表面に着陸はせず、軌道を周回しながら調査を行うオービターだ。現在火星では、同様のオービターである NASA の探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor; MGS)」の探査活動が続いているが、この 2 機の探査機はそれぞれ異なった性格を持っている。すなわち、MGS が火星の地形の構造を詳細に調べる能力に長けているのに対し、オデッセイは火星地表の組成――つまり、そこが何で出来ているか――を調べる能力に長けている。
これら 2 機により得られたデータを総合して分析することにより、火星での水や氷の存在に関して、重要な示唆が得られることが期待されている。その結果見つかった最も興味深い地点が、近い将来の実現を目指して NASA が計画中の火星着陸機の着陸地点となるわけだ。そしてその着陸機は、火星に水や生命が存在するかどうかについて、直接的な証拠を探ることになっている。
さて、このように重要な役割を担うオデッセイであるが、周回軌道への投入はこの計画の中でもっとも難しいところの一つであった。NASA は 1999 年、火星周回探査機「マーズ・クライミット・オービター (Mars Climate Orbiter; MCO)」を、火星周回軌道に投入することに失敗して失っているのである。さらに NASA は同年、火星着陸探査機「マーズ・ポーラー・ランダー (Mars Polar Lander; MPL)」を、火星地表への降下の際、軟着陸させることに失敗し、やはり失っている。事後調査の結果、この2つの計画の失敗は、いずれも単純な人為的なミスが原因であったことがわかっており、NASA の信頼は大きく失墜していた。
このような経緯があるだけに、今回こそは失敗の許されないところであったが、この難関を無事切りぬけたことで、関係者たちは大喜びの様子。NASA は今回はおよそ 3 億ドルの予算をかけ、何度もテストを繰り返して万全の準備で計画を遂行している。
しかし、まだ安心はできない。このすぐ後には、火星の上層大気の空気抵抗を利用して減速を行ない(エアロブレーキング)火星低軌道をめぐる最終的な観測のための軌道に乗せるという、やはり困難な作業が控えているのである。70 日以上をかけて行なわれるこの作業により、オデッセイの軌道は少しずつ火星表面へと近づいていき、最終的には地表 400km の高度を 2 時間で一周するような軌道になる。この作業では、常に変動する火星の大気の状態に対応するため、24 時間体制での調整が続く。
順調に行けば来年 2 月上旬には最初の画像が送られてくるだろう。新世紀初、そして新千年紀初のこの探査機の成功を願いつつ、それを楽しみに待ちたい。