日本でも赤いオーロラが見られた!
【2003年10月30日 国立天文台・天文ニュース(680)】
天文ニュース(679)でお知らせした「太陽の出現した2つの巨大黒点」は、まだ肉眼黒点として話題が続いていますが、そのひとつで日本時間28日20時10分頃、かなり大規模なフレア爆発が起こりました。
太陽フレアは、黒点などの太陽の活動領域で発生する爆発現象で、強力なX線や電波を放射するだけでなく、莫大な量の高エネルギーの粒子を放出します。これらの粒子は、しばしば地球に到達し、電波通信を混乱させたり、電子機器を誤作動させるなどの磁気嵐の原因となり、通信総合研究所などでは警戒を呼びかけています。
ところで、こういった大規模な磁気嵐は、しばしばオーロラの活動を活発化させます。今回の大規模フレアに伴って、日本のような場所でも、早ければ30日の夜に『低緯度オーロラ』が見られる可能性があります。すでに23日夕方に起きた小規模なフレアに伴う低緯度オーロラらしい兆候が北海道で現れていました。29日には北海道陸別町にある銀河の森天文台や北海道名寄市にある木原天文台などで観測されています。
低緯度オーロラは極地域で見られるカーテン状のものとは異なり、酸素の発する暗赤色の光が、北の空であまり動きを見せずに幕のように広がっていることが多いようです。それでも遠方の火事と誤認され、消防車が出動するケースもあるほど明るくなる場合があります。
古文書にも低緯度オーロラは「赤気(せっき)」として出現記録が残されています。以前の天文ニュース(339)で紹介したように、小規模なものは緯度が高い北海道で目撃されることが多いですが、大規模になると目撃できる地域は南に広がり、見られるチャンスは増えます。1989年10月21日の低緯度オーロラは東北地方でも目撃され、1958年2月11日のものは東北、北陸、中部、関東にまで広がりました。古文書によれば、明和7年7月28日(1770年9月17日)には長崎でも見えたようです。
今回起きたフレアの規模は、1989年のものを越えており、その地球への到達速度が速い可能性もあります。ここ数日は北の空を、ぜひ注意して眺めてみましょう。太陽からのエネルギーの贈り物、赤い低緯度オーロラが見えるかもしれません。