VLTが捉えた、土星の衛星タイタンの表面

【2004年4月20日 ESO Press Release

ヨーロッパ南天天文台のVLT(The Very Large Telescope)による観測から得られた、今まででもっとも鮮明なタイタンの画像が公開された。観測で得られたデータは、土星探査機カッシーニに搭載された着陸機ホイヘンスによるタイタン探査計画(タイタンへの着陸は2005年初め)に有用な情報を提供している。

(タイタンの表面の画像)

タイタンの表面の明るさを示した図。暗い部分は、模様の特徴から(非公式に)「横向きのH」「ボール」「犬」「竜の頭」と名づけられた。クリックで拡大(提供:ESO)

タイタンは、土星系最大の衛星であり、太陽系内の衛星としては木星のガニメデに次いで2番目に大きな衛星だ。そして、衛星としては唯一、大量の大気を持つ天体である。大気は、主に窒素や大量のメタンからできている。また、近年の分光及びレーダー観測から、衛星の表面には液体の炭化水素が存在することが示されている。

今回の観測で得られたタイタン表面の太陽光反射マップから、反射能が表層の組織と構造に関連していることがわかった。反射率の低い領域(画像中、暗い部分)では、液体の炭化水素が存在するのではないかと考えられている。一方、明るく反射率の高い領域は、氷に覆われた高地と考えられている。

また、タイタンでは、メタンを中心とした気象学的サイクルが起きていると考えられている。これは、地球の水循環サイクルと同様のものだという。これによりタイタンは、太陽系において地球以外で唯一の雨の降る天体であり、かつ海が存在する可能性を秘めた天体となっている。このため、前生命的な化学物質や地球の生命誕生の起源に関する研究のための興味深い研究対象なのである。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>