土星探査機カッシーニが明かしたエキゾチックなタイタンの姿と土星のリングの謎
【2004年7月5日 JPL News Release / NASA Press Release 】
土星到着から数日しか経っていない土星探査機カッシーニだが、到着前から観測していたものを含めさまざまな興味深い画像を送ってきている。
エキゾチックなタイタンの姿
この画像は探査機カッシーニがタイタンのフライバイ(接近通過)前後に集めたデータによるものだ。南半球の表面はさまざまな物質に覆われており、北半球にはクレーターらしきものが見えている。タイタンは濃い大気に覆われており、ほとんどの波長では鮮明に捉えることができないが、この画像では赤を3倍強調することではっきりとした姿を浮かびあがらせることに成功している。
画像中には、炭化水素が豊富な領域(黄)や氷の多い領域(緑)、メタンの雲(白)などが捉えられている。また、暗い領域には水の氷が、明るい領域は(氷以外の)炭化水素などの物質が豊富に存在していると考えられ、専門家にとっては意外な結果となった。
さらに、南半球で見られるメタンの雲については、衛星をとりまく他の粒子と比べ大きい粒子であることもわかっており、大気の活発な活動を示していると考えられている。
今後4年間の観測期間中、探査機カッシーニは45回のタイタン・フライバイが予定されている。その際、探査機カッシーニとタイタンは950kmの距離に接近することになり、タイタン上部の大気中をレーダーによってのぞくことができるだろうと期待されている。
土星リングを形成する物質の謎
探査機カッシーニはリング世界の探査で、さっそく複雑で興味深い世界の姿と謎をわれわれに見せてくれている。その一つが、カッシーニの空隙(間隙)と呼ばれているA環とB環との間の隙間だ。土星の環のほとんどは氷でできているのだが、カッシーニの空隙は氷よりももっと汚れた物質を含んでいることがわかった。これは、土星の衛星フェーべに見られた黒っぽい物質と似ているという。また、F環はさらに黒っぽい色を見せている。この黒い粒子の存在は、土星のリングが衛星の残骸ではないかという理論に再び火をつけることになりそうだ。
また、探査機カッシーニに搭載された機器は、リングの縁に大量の酸素を検出している。今のところ、この酸素は今年1月に起きた衝突で取り残されたものではないかと考えられており、専門家たちは詳しい分析を急いでいる。さらに、土星上空に吹く風の計測も行われた。
フェーべに見られたような物質の存在は大きな驚きであり、なぜA環とB環がこれほどきれいであるのにカッシーニの空隙は汚れているのかなど、新鮮な驚きと謎を投げかけている。ほんの数日で、専門家のリングへの思いは一気に広がったようだ。