4月9日の金環皆既日食
【2005年4月8日 国立天文台 アストロ・トピックス(93)】
日食とは、月が太陽を隠す現象で、「太陽−月−地球」と並んだ際に月の影に地球が入ると、地上からは太陽が月の陰に隠れて見えなくなります。
太陽の周りを回る地球の軌道が完全な円ではなく、地球−太陽間の距離が少しずつ変化することと、地球の周りを回る月の軌道も完全な円ではなく、地球−月間の距離も変化するため、月の影の地表での投影の様子は、時によって変わります。2つの変化が組み合わさって、月が作る円錐形の本影(ほんえい)の先端が地表に届く場合と、届かない場合ができます。本影が地表に届く場合は、その本影の中に入ると太陽が月に完全に隠されます。この場合を「皆既(かいき)日食」と言います。また、本影が地表に届かない場合、上空で一点に集束した影は再び広がり、擬本影(ぎほんえい)を作ります。この擬本影の中に入ると、月が地表から遠いために小さく見え、太陽を隠しきれません。月の周りに、明るい太陽がリング状にはみ出して見えることになります。これを「金環(きんかん)日食」と言います。
皆既日食の場合も金環日食の場合も、本影や擬本影の周りには「半影(はんえい)」ができます。この半影の中に入ると、太陽の一部分が月に隠されて見えます。これを「部分日食」と言います。部分日食は、皆既や金環が見られる地域の周囲の、かなり広い地域で見ることが出来ます。
残念ながら日本からはその部分日食すら見ることは出来ませんが、2005年4月9日早朝(日本時間)に「金環・皆既日食(ハイブリッド日食)」という珍しい日食が起こります。通常の日食では、先の「皆既日食」または「金環日食」になりますが、今回の日食では、月と太陽のみかけの大きさが、太平洋上の2点(ニュージーランド沖と中米沖)でまったく同じになるため、2点の間では皆既日食、両側では金環日食という珍しい日食になります。1つの日食帯の中で、金環食と皆既日食の現象が起こる事は大変珍しく、前回の金環皆既日食は1987年に起こりました。また、次回は、2013年に起こります。
この珍しい日食をLIVE! ECLIPSE 2005という団体が2地点(金環日食地点と皆既日食地点)からインターネットにより中継を行う予定です。土曜日の早朝の中継となりますが、早起きして見たいものです。