ニューホライズンズ、木星スイングバイ成功 中赤斑も撮影
【2007年3月2日 New Horizons News】
2006年1月19日(米東部標準時、以下同様)に打ち上げられたNASAの探査機「ニューホライズンズ」が、2月28日に木星スイングバイに成功し、冥王星とエッジワース・カイパーベルトに向けて加速した。
予想どおりの軌道を予定どおりの時刻に通過し、ニューホライズンズ運用チームは一安心といったようすだ。
2月28日午前0時43分、探査機は木星から230万キロメートルの「チェックポイント」を通過し、スイングバイ(解説参照)は成功した。地球から飛び立っての1年1か月間で飛行距離は8億キロメートル。設定されていたチェックポイントは直径800キロメートル以内。これはクレイ射撃で60キロメートル離れた的を射抜くに等しい。
しかし、運用チームがスイングバイ成功を知ったのはそれから半日後のことだ。木星に近づいている間、ニューホライズンズの全性能が大気や衛星の観測に注がれていたからである。今年の1月から6月までは、木星の学術的探査と機器動作のチェックを兼ねた観測に割り当てられてられていた。期間中に700回を超える観測の実に半分以上が、今週中に行われる。
データが地球へ送信され、さらに解析されるまでの時間を考えれば、観測結果の全容が明らかになるのは先のことだ。だが、2月26日に撮影されたこちらの画像は、わかりやすい成果だろう。2005年末に出現して以来、木星への関心を集め続けた「中赤斑」に今までで一番迫った写真だ。何枚か撮影された画像を合わせて分析することで、今後中赤斑の周りや内部における大気の動きが研究される予定となっている。
この画像を撮影したのは、望遠撮像装置LORRIである。LORRIが本来撮影するのは太陽光がほとんど届かない冥王星なので、はるかに近い木星の昼を正面から撮影すると、露光オーバーになってしまう。夜を迎えつつある中赤斑をあえて撮影したのは、そのためだ。
スイングバイ
惑星探査などに欠くことのできない軌道制御技術。探査機が天体近傍を通過する際、天体の重力場によって探査機の軌道を曲げ、さらに角運動量を得て探査機に格段の加速(または減速)を与えるというもの。実施には厳密な軌道制御が必要になるが、燃料の節約や軌道設計の自由度の拡大などの大きなメリットがある。(「最新デジタル宇宙大百科」より抜粋)