「ひので」の成果が、科学雑誌「サイエンス」の特集と表紙に!
【2007年12月7日 国立天文台 ひので科学プロジェクト】
日本の太陽観測衛星「ひので」(SOLAR-B)の成果が、米科学雑誌「サイエンス」で特集され、表紙も飾ることになった。
昨年9月23日に打ち上げられた日本の太陽観測衛星「ひので」は、搭載されている3つの観測装置を使い、太陽研究にインパクトを与える成果を次々と出している。
その「ひので」の成果が、12月7日発行の米科学雑誌「サイエンス」で特集され、9編の論文が発表された。また、掲載された記事の中で、とくに重要な内容を示す表紙も飾ることとなった。日本の探査機や衛星としては、2006年6月2日号で小惑星探査機「はやぶさ」が特集され表紙を飾った以来のことだ。
これは、「サイエンス」が「ひので」の成果を極めて高く評価していることを示している。また、これと前後して、日本天文学会欧文研究報告の11月30日号や、Astronomy and Astrophysics(ヨーロッパを代表する天文学の学術雑誌)でも「ひので」の特集号が発行される。
「ひので」特集号に掲載される主要な成果の概要を紹介しよう。
初めてとらえられた「太陽風の源」
「ひので」は、X線望遠鏡(XRT)を使い、太陽活動領域(黒点など磁場の強い領域)の上空のコロナを観測した。
その結果、コロナ中のガスが、磁力線(画像中に見える筋状の構造)に沿って秒速140キロメートル前後で絶えず上空に流れ出ているようすが発見された。
この領域から画像中左上の薄暗い領域に向かってのびる磁力線は、太陽表面に戻って来ずに、宇宙空間へと伸び出していることが磁場観測から示唆されている。
今回見つかったガスの流れは、この伸び出す磁力線に沿って太陽から吹き出し、われわれの太陽系を満たしている太陽風の源となっていると考えられる。
太陽風は地球にも大きな影響を与えるため重要な研究対象であり、「ひので」は、この太陽風の吹き出しを初めてとらえたのである。
コロナ加熱問題の鍵となるか、「アルベン波」を検出
「ひので」に搭載されている可視光・磁場望遠鏡(SOT)による黒点上空の太陽大気の観測では、コロナ加熱の問題の解決に期待がかかる成果が得られた。
コロナ加熱の問題とは、6000度の太陽がどのようにして100万度のコロナを加熱維持できるのかという問題である。
「ひので」がとらえた画像中、中央付近を横方向に走る円弧状の線は太陽の縁だ。その上空に、プロミネンスと呼ばれる、高温コロナ中に浮かぶ低温ガスのかたまり(水平方向にのびる雲のような形状をした部分)が見えている。
観測データから作成された動画の解析からは、このプロミネンスのガスが、上下に波打っていることが明らかとなった。
これは、磁力線に沿って伝わる横波(アルベン波)を見ているものと考えられている。従来から、磁力線を伝わる波のエネルギーによって電子レンジのようにコロナが加熱されているという説があったが、「ひので」は太陽大気中のアルベン波を初めて検出したのだ。
この発見は、太陽物理の大きな謎であるコロナ加熱の問題を解決するための鍵となると期待されている。