すばる望遠鏡、系外惑星の撮影に成功!
【2009年5月25日 すばる望遠鏡】
大阪大学、神戸大学、国立天文台などの研究者からなるチームが、すばる望遠鏡が2002年にとらえた恒星HR 8799の画像を解析したところ、一番外側の軌道をまわる惑星の姿が検出された。
1995年の第1号以来、これまでに発見された太陽以外の恒星を周回する惑星(系外惑星)の数は約350に上るが、ほとんどが、中心の恒星が放つ光に生じるわずかな変化をとらえるという間接的な方法による発見だ。惑星そのものを撮影したとされる例は10件にも満たない上に、それさえも「惑星候補」どまりだった。
太陽系のような惑星を別の星から観測しようとすると、惑星は中心の恒星に比べてひじょうに暗い(木星の明るさは太陽のおよそ10億分の1)うえに、あまりにも恒星に近い。結局、撮影された惑星候補天体は、質量が大きい(惑星とは別種の天体かもしれない)、恒星から遠い(たまたま恒星と同じ方向にあるだけで周回していないかもしれない)といった疑惑を払拭できなかったのだ。
2008年11月、多くの研究者が惑星と認める画像がついに、しかも相次いで発表された。NASAのハッブル宇宙望遠鏡がみなみのうお座の恒星フォーマルハウトに惑星を見つけ、ハワイのジェミニ望遠鏡とケック望遠鏡は恒星 HR 8799の恒星のまわりに3つの惑星の姿をとらえた。
これを受けて、大阪大学、神戸大学、国立天文台などの研究者からなるチームが、2002年にすばる望遠鏡がとらえたHR 8799の画像を再び詳細に解析したところ、恒星から一番離れた軌道をまわる惑星HR 8799bを検出することに成功した。
ペガスス座の方向約130光年の方向にあるHR 8799は、ちりの円盤に囲まれていることが知られている。すばる望遠鏡が2002年に観測したのは、その円盤を調べるためだった。惑星同様、恒星に近くて淡い円盤をとらえるため、撮影はコロナグラフ撮像装置CIAO(チャオ)を使って、HR 8799自体を観測装置内部のマスクで隠しながら行われていた。また、大気のゆらぎをリアルタイムで補正して星像をシャープにする補償光学装置が使われた。
この画像に、暗い惑星の検出にもっとも適した処理を施した結果、恒星から68.7天文単位(1天文単位は太陽と地球との平均距離で、約1億5000万km)離れた惑星HR 8799bを浮かび上がせることに成功したのだ。
この研究成果は、単なる確認観測にとどまるものではない。ジェミニとケックがHR 8799bを撮影したのは2007年だが、5年前のHR 8799bと位置を比較することで、軌道を推定する手がかりが得られる。また、独立にHR 8799bの明るさを測定した結果も、ほかの望遠鏡と一致した。それによれば、木星の約10倍の質量を持つと推定されるという。
現在のすばる望遠鏡には、新しいコロナグラフカメラと性能が向上した補償光学が搭載されている。同望遠鏡が新たな系外惑星を撮像する可能性にも、じゅうぶん期待できそうだ。
ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示
ステラナビゲータでは、HR 8799bが存在する方向を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された約300個の恒星を、追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ(Ver.8以降)をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。
なお、惑星HR 8799bが存在する恒星には「HR 8799」だけではなく、さまざまな呼び方があります。「コンテンツ・ライブラリ」からダウンロードできるデータには、「V342 Peg」として登録されています。