ハッブル宇宙望遠鏡のデータから14個の太陽系外縁天体を発見
【2010年9月17日 CfA】
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)のデータ・アーカイブスの画像を分析したところ、14個の太陽系外縁天体が発見された。見つかった天体は大きさが直径40〜100kmで、明るさは肉眼で見える天体の明るさの1億分の1以下しかない。
海王星軌道の外側には多くの氷の天体が存在しており、太陽系外縁天体(TNO)と呼ばれている。そのうち最大級のものは、準惑星に分類されている冥王星だ。太陽系外縁天体の存在する領域は、有名なハレー彗星をはじめ多くの彗星の故郷でもある。太陽系外縁天体はサイズが小さく、ほとんど太陽光も当たらず暗いため発見は困難だが、北アリゾナ大学のCesar Fuentes氏らの研究チームはハッブル宇宙望遠鏡(HST)の画像データの中から、新たな太陽系外縁天体14個を発見した。
太陽系外縁天体はゆっくりと太陽のまわりを回っており、地球から見ると背景の星に対して移動する。そのようすを長時間露出で撮影すると光跡が描かれる。Fuentes氏らの研究チームは、数百枚ものHSTの画像を分析するソフトウェアを開発し、そのような光跡を探した。さらに有望と思われる天体の候補に印をつけ、それらが目的の天体であるかどうか視覚的な確認を行った。
発見された14個の天体はすべて25〜27等ほどととても暗く、肉眼で見える天体の明るさの1億分の1以下しかない。また、1組の連星(2つの太陽系外縁天体が、冥王星と衛星カロンのように互いのまわりを回っているもの)が含まれている。
さらに、運動のようすから各天体の軌道と距離が計算され、距離と明るさ(および推定される太陽光の反射率)とを合わせて天体の大きさが推測された。その結果、新たに発見された太陽系外縁天体の大きさは直径40〜100kmの範囲であることが示された。
小さい太陽系外縁天体は大きいものの破片であり、数十億年の間に天体同士がぶつかり合い小さく砕けてできたと考えられている。研究チームでは太陽系外縁天体がどのように進化してきたのか(小さい天体の数が増えていったのか)を調べるため、数百個の太陽系外縁天体を軌道の傾きが小さなものと大きなものとにわけて天体の大きさの分布を調べた。
その結果、太陽系外縁天体の大きさの分布は、天体が暗く小さければ軌道の傾きが小さいものも大きいものもほぼ同じになることがわかった。太陽系外縁天体は軌道の傾きの大きさによらず同じような衝突の歴史を経たことを物語っている。
Fuentes氏は「太陽系外縁天体は太陽系形成の材料の一部が残されたものであり、興味をそそられます」と話している。同氏らが開発した方法による太陽系外縁天体探しはまだ始まったばかりで、今回の研究ではひじょうに狭い範囲しか調べられていない。つまり、サーベイの対象領域はまだまだ広いのである。HSTのデータ・アーカイブスには、まだ数百個もの太陽系外縁天体が隠れている可能性があり、Fuentes氏らは今後も研究を続ける予定だ。