11. 小惑星
太陽系天体のうち惑星や衛星、彗星などを除くものは「小惑星」と呼ばれます。2023年3月14日現在で1,264,630個の小惑星が見つかっています。
小惑星帯
小惑星で代表的なのは火星と木星の間に分布する「小惑星帯」の天体です。主に岩石からなります。
1801年1月1日、イタリア・シシリー島のパレルモ天文台のピアッジは、おうし座にある8等級の星が、わずかづつ移動していることを発見、24日にドイツの天文学者ボーデに報告したのです。当初は彗星と思われていましたが、数カ月の位置観測の末、ドイツの天文学者ガウスによって軌道がもとめられました。その結果、軌道の形は彗星のものではなく惑星のものであることがわかったのです。新惑星には、シシリー島の女神の名前をとってケレス(またはセレス)という名前がつけられました。
さて、1802年3月には第2の小惑星パラスが発見され、その後ジュノー、ベスタと相次いで発見されるにいたって、似たような軌道を回るこれらの微小天体を小惑星と分類するようになりました。ちなみに、最初に発見されたケレス、パラス、ジュノー、ベスタは「四大小惑星」と呼ばれています。
現在ケレスは「準惑星」に分類されています。ケレスの直径は約1000kmですが、直径が500kmを超えるものは他に2個、直径250kmを超えるものでも十数個しかありません。
特異小惑星
小惑星のほとんどは、火星と木星の軌道の間を運行していますが、中には標準の軌道を大きく逸脱したものが発見されています。それらを特異小惑星と呼んでいます。
地球に接近する小惑星
1898年8月にベルリンでウイットによって発見された小惑星エロスは、その軌道の平均距離が1.46天文単位と計算されました。これは火星の平均距離1.52天文単位より小さく、当時、小惑星は火星軌道と木星軌道の間にあると信じられていた、従来の概念を打ち破った最初の小惑星となりました。しかも、離心率0.22とかなり大きく、軌道傾斜が小さいために、最大で地球に0.15天文単位まで近付くことがわかりました。0.15天文単位と言えば約2230万kmの距離です。
さらに、1932年にはアモール、アポロという2つの地球に接近する小惑星が発見されました。とくに、アポロは平均距離1.49、とエロスとほとんど変わらないものの、離心率が0.566と異常に大きく、軌道の最内周は金星軌道の内側まで入り込み、最外周は火星軌道の外側にまでおよんでいました。そして、最接近時には0.076天文単位(約1140万km)まで地球に近付くことがわかりました。
以後、このタイプの小惑星を「アポロ型小惑星」と呼んでいます。
アポロ型小惑星としては、1949年に発見されたイカルスが有名で、近日点距離0.19天文単位、離心率0.83という値を持っています。イカルスは近日点付近では、水星軌道よりさらに太陽に接近することになります。
トロヤ群小惑星
木星とほぼ等しい軌道要素を持つ小惑星群があります。アヤクス、オデュセウス、ネストル、メネラウス、テラモン、アガメムノン、ヘクトル、アキレス、アンティオクス、ディオメテス、アンキセス、パトロクルス、トロイルス、エネアス、ブリアムスの15個に代表され、トロヤ戦争に参加した勇士の名前を付されたこれらの小惑星を「トロヤ群小惑星」と呼んでいます。
1774年に発表されたラグランジェの論文によれば、ある適当な速度を持っている3つの天体が1つの正三角形の頂点にあって、それぞれ万有引力の法則によって引き合っているならば、3体は永久に正三角形の関係位置を保ちながら運動するというのです。
つまり、太陽と木星を結ぶ直線を1辺とする正三角形の頂点(太陽から見て木星の60度前方、あるいは60度後方)を回っているこれらの小惑星は、木星の大きな摂動の影響を受けることなく、常に安定した運動をしているというわけです。
2023年2月2日現在、木星には12,360個のトロヤ群小惑星が見つかっています。また、火星や天王星や海王星、さらには地球にもトロヤ群小惑星が見つかっています。
太陽系外縁天体
海王星より遠い太陽系の果てにも、数多くの小天体が発見されています。もっとも、冥王星を除けば発見第一号は1992年のことですから、最近になってようやく本格的な観測と研究が始まった領域ともいえます。最初のうちはこうした天体も「小惑星」と呼ばれてきましたが、現在では小惑星帯とはまったく異なる天体のグループ、「太陽系外縁天体」として認識されています。
現在見つかっている太陽系外縁天体のほとんどは、天体がベルト状に存在していることを予言した科学者の名前にちなんで「エッジワース・カイパーベルト」とも呼ばれる領域に存在します。エッジワース・カイパーベルトに存在する天体は、短周期彗星の元となっているとも考えられています。一方、さらに外側には長周期彗星の元となる「オールトの雲」の天体が存在すると予想されています。
太陽系外縁天体の代表は、1930年に発見された準惑星の冥王星です。小惑星帯と比べて大きめの天体が多く、現在最大のもので準惑星に分類されるエリスの直径は約2400kmです。冥王星やエリスのように大きくて、準惑星にも分類されている太陽系外縁天体のことを特別に「冥王星型天体」と呼びます。2023年3月現在、冥王星型天体は冥王星、エリス、マケマケ、ハウメアの4つです。また、3000を超える太陽系外縁天体が見つかっています。
小惑星の名前
小惑星が発見されると、彗星と同じようにまず仮符号が与えられます。小惑星に付けられる仮符号は1991WAとか、1992XEといったように、発見年をあらわす数字と、2文字のローマ字によって構成されています。西暦年号をあらわす数字の後のローマ字は、1年を半月毎に24期に分け1月上旬からA、B、C、…とし、発見日に該当する文字を割り振り、次のローマ字は該当期間内に発見された順にAから割り振られたものです。
発見後、継続的に観測が行われ、軌道が確定された小惑星のうち、既発見のものでないことが確認されると、通し番号と名前が付けられます。小惑星の名前は、彗星のように発見者の名前に限定されておらず、任意(人名、地名などが多い)に発見者(あるいは計算者)がつけることができます。
小惑星の軌道要素
小惑星の場合も彗星と同じように軌道要素が発表されます。
一般的には彗星と同じ6つの要素を使います。
- T
- 近日点通過時刻(日の小数)
- Peri.
- 近日点引数(゚)
- Node
- 昇交点黄経(゚) 2000年分点
- Incl.
- 軌道傾斜角(゚)
- e
- 離心率
- q
- 近日点距離(au)
さらに、
- a
- 軌道長半径(au:天文単位)
- n゚
- 平均運動量(゚)
- P
- 周期(年)
という3つの要素が追加される(彗星の場合にも周期彗星の場合には、これらが併記されることもあります)ことがあります。
ステラナビゲータは、小惑星の軌道要素を読み込んで表示することができます。また、新しい軌道要素をインターネットからダウンロードすることもできます。
なお軌道要素は1992年からは、2000年の基準分点における値で発表されていますが、それ以前に発表されたものは、1950年の基準分点における値で発表されています。ステラナビゲータ では、どちらの形式のものでも入力できるようになっています。