惑星形成の現場? 円盤中の空隙に小さな天体を発見
【2011年2月28日 ESO】
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の観測により、原始惑星系円盤中のギャップ(空隙)に小さな天体が発見された。これは空隙を作った惑星か褐色矮星だと考えられ、惑星の形成過程の理解に大きな手がかりとなりそうだ。
マックスプランク研究所などの研究者からなる国際チームがヨーロッパ南天天文台(ESO)大型望遠鏡(VLT)を用いて、カメレオン座T星という若い星の原始惑星系円盤(注1)中の空隙に小さな天体があることを発見した。
原始惑星系円盤中のダストから惑星が形成されるまでの時間は非常に短く、この状態にある天体はなかなか見つけることができない。その貴重な状態にある天体の1つであるカメレオン座T星は地球から350光年の距離にあり、たった700万歳の若い星だ(注2)。
VLTを用いてカメレオン座T星とその円盤の観測を行ったところ、カメレオン座T星から2000万km離れたところから11億km離れたところまで円盤が存在しておらず、その間が環のように空隙となっていた。
この空隙は中心星から非常に近く、その中を回る天体の観測は困難であったが、慎重な観測によりカメレオン座T星から10億km離れたところに天体があることを示す兆候が見つかった。これは太陽系に例えると木星よりも少し外側の位置にあたり、カメレオン座T星の空隙の端に位置している。
このような、自ら輝く星よりもずっと小さい天体が原始惑星系円盤の中に見つかったのは初めてのことである。現時点で星ではないことは明らかだが、褐色矮星か誕生してまもない惑星であるかはまだわかっていない。今後の観測により、同種の天体の発見や原始惑星系円盤で何がおきているのかを解明することが期待される。
注1:「原始惑星系円盤」 誕生したばかりの星の周囲に存在する円盤状のガス雲。この円盤から小天体や惑星が誕生する。惑星は重力によって物質を掃き集めながら成長するため、その軌道は円盤の空隙となる。
注2:「若い星」 カメレオン座T星はTタウリ型星(おうし座T型星)と呼ばれる、恒星の進化の過程における初期の段階にある。この段階を超えると、現在の太陽と同じ主系列星という段階に入る。