小惑星探査機「ドーン」によるベスタの概観
【2011年11月30日 NASA (1)/(2)】
8月から正式に科学観測を開始した小惑星探査機「ドーン」による、小惑星ベスタの観測結果について紹介しよう。ベスタには太陽系屈指の高い山があり、南半球と北半球ではその地表面の年代が異なるようだ。
探査機「ドーン」は8月11日にベスタの科学観測を開始し、まずは20日間の「概観観測軌道」(survey orbit)での観測を行った。その後9月末からは、30日間にわたって高度680kmの「高高度マッピング軌道」(HAMO)での観測を行った。
「概観観測軌道」(survey orbit)とは約2,700km上空を3日間で1周しながらベスタの全体像をとらえたものだ。可視光線と赤外線で全球を観測したマッピング分光計のデータと、フレーミングカメラによるモザイク撮影画像から、地表の地形・組成図を生成する。また、探査機の動きから重力を割り出し、重力場の測定も行っている。
それによると、ベスタの南半球には高さ22kmという太陽系内でも屈指の高い山があり、その周囲には地すべりでできたと考えられる急斜面が発見された(画像1枚目)。またクレーターの周囲には元素組成の多様性が見られた。
さらにクレーターの数から年代を求める「クレーター年代学」による初期観測の結果、南半球は10〜20億年前に形成されたと考えられ、北半球よりも少し若いことがわかった。
12月5〜9日にかけて行われるアメリカ地球物理学会では、さらに最新の結果が報告される予定だ。「ドーン」自体はHAMOでの観測の後、「低高度マッピング軌道」(LAMO)に移行して観測を行う。その後2012年中にベスタを離脱し、次の目的地である準惑星ケレスに向かうことになっている。