岩石惑星の芽を意外な場所に発見
【2012年12月6日 ESO】
へびつかい座の方向にある褐色矮星の周囲の円盤に、微粒子が集まってできたとみられる大きい粒子が存在することがわかった。地球のような岩石惑星がどのように形成されるか、その理論の見直しを迫る意外な発見となった。
チリのアルマ望遠鏡でへびつかい座ρ(ロー)星形成領域にあるRho-Oph 102という褐色矮星(注1)を電波観測したところ、星の周囲の塵とガスの円盤構造の外縁部に、ミリメートルサイズの粒子が存在することが判明した(注2)。
これまでの理論からすると、これは意外な発見だ。
幼い恒星の周囲の円盤の中では微粒子が衝突合体を繰り返して成長し、やがて岩石惑星が形成されると考えられている。だが今回発見されたような褐色矮星の円盤の外縁部では微粒子はまばらにしか存在せず、また動きが速すぎて衝突後に合体しにくいため、大きい粒子が形成されることはないと考えられていた。さらに、粒子が成長したとしても円盤中心に移動してしまい、今回発見されたような場所には存在しないというのが一般的な理論だった。
「こうした場所で実際に岩石惑星ができあがるかどうかは定かではありませんが、少なくともその第一段階が今回確認されたわけです。固体微粒子が大きくなっていく条件について見直しが必要になります」(発表者のLuca Ricciさん)。
また今回の研究では、褐色矮星の周囲にこれまで見つかっていなかった低温の一酸化炭素ガスも初めて検出された。粒子の発見とあわせて、これまで考えられていた以上にこの円盤が若い星のものと似ていることが示されている。
アルマ望遠鏡全体が完成するのは2013年だが、すでに従来の電波望遠鏡をはるかにしのぐ性能に達しており、つぎつぎと新しい発見をもたらしている。
「アルマの完成後は、この円盤やその他の天体をもっと詳細に調べることができるようになります。粒子の存在だけでなく、どのように円盤に分布していて、今回見つかったようなガスとどのように相互作用しているかもわかるでしょう。そこから、惑星の形成プロセスへの理解が飛躍的に深まると期待されます」(Ricciさん)。
注1:褐色矮星 質量が小さいために熱核反応を開始できなかった、いわば「なりそこないの恒星」。重力収縮によって熱を放射し、かすかに赤く光る。
注2:円盤の粒子サイズ 1mm前後の波長の電波を検出する観測を行い、褐色矮星にあたためられた円盤の熱を感知する。粒子の放射する波長はそれ自体の大きさと関連しているため、1mm以上の粒子が含まれることがわかった。