偏光観測でとらえた惑星形成のはじまり
【2012年11月28日 西はりま天文台】
神戸大学、兵庫県立大学、国立天文台、埼玉大学の研究者がリードする国際研究チームは、おうし座方向にある恒星をとりまく原始惑星系円盤の姿をすばる望遠鏡で直接とらえた。円盤中には、単純な球形ではない、比較的大きな塵粒子が含まれており、こうした粒子の衝突合体から惑星が生まれる途上にあるとみられる。
2009年12月、神戸大学、兵庫県立大学、国立天文台、埼玉大学の研究者がリードする国際研究チームは、すばる望遠鏡を用いて約450光年かなたにあるおうし座UX A星の原始惑星系円盤(注)の近赤外線観測を行った。
観測では特に、円盤に含まれるわずかな塵の分布を調べるために、光の波としての性質を利用する偏光観測(光の振動方向の偏りを測る観測)を行った。塵の微粒子は衝突合体をくりかえして惑星に成長する可能性があるため、その表面で生じる近赤外線の反射の性質を調べることは、惑星の生い立ちを知るうえで重要な手がかりとなる。
観測の結果、原始惑星系円盤は半径120天文単位まで広がり、南北方向にやや伸びていることがわかった。さらに西側が東側に比べてやや明るいことから、正面に対して東西方向に(西側が地球に対して近くなるように)傾いた円盤を見ていると考えられる。
また、円盤から来る光が強い偏光を示していることがわかった。偏光の向きの角度分布は中心星を中心とする同心円状になっており、偏光度は偏光角によって大きく変化する。
「今までは偏光の向きによらずに高い偏光度を示す天体が多く検出されました。しかしこの天体は、偏光の向きによって偏光度が2%から66%と大きく変化しています。この見慣れない観測結果の解釈に非常に苦労しました」(兵庫県立大学の伊藤洋一さん)。
円盤の中の場所によらず偏光度が高いケースは、サイズがじゅうぶん小さい球形粒子による光の反射で説明できるが、今回のような観測結果はこのような既存のモデルでは説明ができない。
「いろいろ考えたあげく、単純な球状ではない、しかも観測波長に比べて十分大きい30μm程度の塵粒子が中心星からの光を反射しているとすると、全てつじつまが合うことがわかりました」(伊藤さん)。
おうし座UX A星の円盤に見られる塵は、もともと星間空間に存在していた0.1μm程度の小さな塵の粒が頻繁に衝突・合体することにより、30μmほどの大きさまで成長したものと考えられる。今回の観測は、惑星の材料である塵粒が惑星への成長する過程の第一歩をとらえたものなのかもしれない。
注:「原始惑星系円盤」 濃く集まった塵とガスの雲の中心部分で恒星が生まれるため、多くの幼い恒星の周囲には、残された塵とガスの円盤構造が見られる。こうした円盤構造の中で惑星が形成されると考えられている。