従来の測定より近かった大質量星形成領域NGC 6334I
【2014年4月30日 国立天文台VERA】
国立天文台VERAなどの電波観測で、さそり座方向の大質量星形成領域がこれまで考えられていたよりも大幅に近い距離にあることがわかった。天の川銀河の地図にも影響する高精度の計測結果だ。
NGC 6334I(North)は、さそり座方向に位置する大質量星形成領域だ。太陽系に比較的近く、両半球から見えるので、多くの観測研究が行われている。
James O. Chibuezeさん(国立天文台ALMA東アジア地域センター)らの研究グループは、国立天文台VERA(全国4局の観測アレイ)などの電波望遠鏡を用いて、この領域の水メーザー(水分子で増幅されたマイクロ波放射)を観測した。
2010年2月から2012年4月にかけて行われた10回の観測の結果、年周視差(地球の公転にともなう見かけの位置の移動)は0.789±0.161mas(1mas=360万分の1度)で、太陽系からの距離は約4110光年と算出された。これは従来の推算値の約4分の3ほどになる。質量や光度もこれまでの半分程度の値になった。
また、ある領域内の水メーザースポット23箇所の動きから、天体の両極方向に噴き出すジェット構造(双極流)も検出されている(画像1枚目)。形成から295年程度のこの双極流は、平均で秒速12km、大きさは720auと推定される。
今回の観測結果によって、天の川銀河の面上におけるNGC 6334Iの位置が改良された。この天体は「いて座腕」と呼ばれる天の川銀河の渦状腕に属しているが、今回の結果と他の天体の観測結果とをあわせ、このいて座腕の位置角もさらに高精度に求められている(画像2枚目)。