“月食”中でもかすかに光る、木星のガリレオ衛星
【2014年6月19日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡により、木星の影に入ったガリレオ衛星がわずかに光る現象が観測された。皆既月食の赤い月と似た原理で、太陽光が木星の上層大気で散乱されて間接的に照らしているものと考えられ、惑星大気の新たな観測手法につながると期待される。
木星の影に入った衛星ガニメデとカリストが、太陽光に直接照らされていない食の状態にも関わらず、通常の100万分の1ほど近赤外線で光る現象が観測された。東北大学の津村耕司さんやJAXA宇宙科学研究所、国立天文台などの研究チームが、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡で観測した。
詳しい原因ははっきりとは解明されていないが、スピッツァー宇宙望遠鏡の観測データもあわせて調べたところ、木星の上層大気のもやで散乱された太陽光が衛星を間接的に照らしているという説が最有力だという(画像2枚目)。このメカニズムは、地球で見る皆既月食が赤く光っている(太陽光が地球大気により屈折して月面を照らす)のと似たものだ(画像3枚目)。
通常の惑星観測では惑星が反射する太陽光を見ているが、こうした「透過光」を見る観測手法は、太陽系惑星を観測するという点で新しいものだ。
今後この現象を継続的に調べることで、これまで観測が難しかった木星のもやの性質に迫れるだけでなく、近年数多く発見されている系外惑星の大気についても新たな知見が得られると期待される。