小惑星ベスタ由来の隕石に高圧鉱物
【2014年7月22日 広島大学】
小惑星ベスタ由来とされる隕石から、天体衝突の痕跡である高圧鉱物が初めて見つかった。地表クレーターが物語ってきた過去の天体衝突の新たな証拠となる一方で、推測されるクレーター形成時期との不一致が見られ、隕石の起源や飛来プロセスについて見直しを迫る成果ともなっている。
NASAの探査機「ドーン」が2011年〜2012年に行った周回探査から、小惑星ベスタには多数のクレーターが存在することが明らかになっている。こうしたクレーターは過去に激しい天体衝突があった可能性を示すものだが、一方で、ベスタ由来とされる隕石には、天体衝突時の超高圧力・高温環境で生成する高圧相の鉱物が発見されていなかった。
宮原正明さん(広島大学大学院理学研究科)ら複数機関の研究チームは、電子顕微鏡や集束イオンビーム加工装置といったナノ分析技術を駆使して、ベスタ由来のHED隕石からシリカ(SiO2)の高圧相であるコーサイトとスティショバイトを世界で初めて発見した。天体衝突の新たな証拠となるものだ。
またシリカの高圧相と放射年代から、HED隕石に記録された天体衝突は約41億年前に起こったこともわかった。これまでの研究では、約10億年前の天体衝突で巨大なクレーターが形成され、弾き飛ばされた地表の物質が地球にHED隕石として飛来したと推測されていた。ベスタのクレーターの形成時期と一致しなかったことで、HED隕石の起源と地球への飛来プロセスを再考する必要が出てきた。
今から38〜41億年前、多数の天体が月に集中的に衝突した時期(後期隕石重爆撃期)があったと考えられている。今回の研究は、この集中衝突がHED隕石の母天体も含めたさまざまな天体で起こっていた可能性を裏付けるものだ。引き続き多くの隕石を調べることで、太陽系内の天体衝突史がますます明らかになるだろう。